この記事のポイント
- スキンフラッディングは水分を薄く数回重ねて角質層をうるおいで満たす保湿法です。
- 水分は重ねるだけでは蒸発しやすく、最後に油分でフタをして初めて肌にとどまります(TEWLの考え方)。
- 濡れた肌に化粧水を2〜4回、こすらず押さえて重ね、乳液・クリームで仕上げるのが基本の手順です。
「スキンフラッディングは化粧水をたっぷり重ねるほど潤う」——そう思って何度も重ね付けしているのに、かえってごわつく。そんな声をよく聞きます。実は水分は重ねるだけでは肌にとどまらず、放っておくと蒸発してしまうことがあります。この記事では、スキンフラッディングが潤う仕組みと、水分を無駄なく抱え込むための正しい手順、そしてやりすぎのサインまでを、データをもとにやさしく整理します。読み終えるころには、「回数を増やす」より大事な一手が見えてくるはずです。
スキンフラッディングとは?水分を洪水のように重ねる保湿法
スキンフラッディングは、化粧水などの水分を薄く何度も重ねて角質層をうるおいで満たす保湿法です。「フラッディング(flooding=洪水)」の名前どおり、一度にたっぷり塗るのではなく、少量を数回に分けてなじませるのが特徴です。SNS発の手法として広まりましたが、その考え方自体は、化粧品科学でいう「角質層の水分保持」に沿っています。
よく似た言葉に「レイヤリング(重ね付け)」がありますが、スキンフラッディングは特に、乾ききる前に次の層を重ねるリズムと、最後に油分でフタをする仕上げまでを一つの流れとしてとらえる点に特徴があります。ただ回数を増やすことではなく、満たした水分を逃さないところまでを含めて一つの手法だと考えると、失敗しにくくなります。
なぜ水分を重ねると潤うの?角質層とうるおいの仕組み
うるおいのカギは、肌の一番外側にある角質層にあります。厚さはわずか0.02mm前後(ラップ1枚ほど)ですが、ここが水分をためる役割を担います。角質層は、レンガのように積み重なった細胞と、そのすき間を埋める「細胞間脂質」でできていて、この構造が水分を保つ壁になっています。
さらに角質層の細胞の中には、アミノ酸などからなる天然保湿因子(NMF)があり、これが水を抱え込むスポンジのように働くとされています。研究では、健やかな角質層の水分量はおよそ20〜30%が目安とされ、これを大きく下回るとごわつきやカサつきを感じやすくなると報告されています。水を薄く重ねるスキンフラッディングは、このスポンジに少しずつ水を含ませていくイメージ、と考えると分かりやすいです。
一度に大量の水を与えても表面を流れて落ちるだけで、薄く重ねたほうがなじみやすいというのが土台の考え方です。少量を複数回に分けることで、角質層がふやけすぎず、必要なぶんだけを含んでいける、というわけです。
水分だけでは逆に乾く?「フタ」が要になる理由
ここが名前だけでは気づきにくい、いちばん大事なポイントです。水分は放っておくと蒸発します。肌の内側から水分が空気中へ逃げていく量を経表皮水分蒸散(TEWL)と呼びます。化粧水を塗った直後は表面がうるおって見えても、フタをしなければ、塗った水と一緒に肌本来の水分まで奪われ、かえって乾く「過乾燥」につながることがあります。とくに空気が乾く冬やエアコン下では、この蒸発が進みやすくなります。せっかく重ねた水分ほど、肌の外へ引っぱられて逃げていく、と考えると分かりやすいかもしれません。うるおって見える直後こそ、いちばん蒸発しやすいタイミングでもあるのです。
だからこそ、最後に油分でフタをする一手が要になります。研究では、油分の膜をつくるオクルーシブ(密封剤)成分の中でもワセリンは、5%ほどの配合でTEWLを98%以上抑えたという報告があり、一般的な植物油の20〜30%という数字と比べても水分を逃しにくいとされています。つまり、水分(化粧水)で満たし、油分(乳液・クリーム)でフタをする——この二つがそろって初めて、重ねた水分が肌にとどまります。水だけを何度も重ねるのは、フタのない器に水を注ぎ続けるようなもの、というわけです。
保湿にかかわる成分は、大きく次の三つのタイプに分けて考えると整理しやすくなります。
| タイプ | 主な働き | 蒸発を防ぐ力 | 代表的な成分例 |
|---|---|---|---|
| ヒューメクタント | 水を抱え込んで引き寄せる | 弱め | グリセリン、ヒアルロン酸、アミノ酸 |
| エモリエント | すき間を埋めてなめらかにする | 中くらい | スクワラン、各種オイル |
| オクルーシブ(密封剤) | 膜でフタをして蒸発を防ぐ | 強い | ワセリン、ミツロウ |
化粧水で入れる水分を支えるのがヒューメクタント、そして最後の仕上げを担うのがオクルーシブです。どちらか一方だけでは足りない、ということが表からも読み取れます。
スキンフラッディングのやり方|濡れた肌に重ねる手順
手順はシンプルですが、タイミングと量でなじみ方が変わります。次の順番で試してみてください。
- 洗顔後は時間を空けず、肌がまだ少し湿っているうちに始めます。乾ききる前のほうが水分がなじみやすいためです。タオルはこすらず、押さえて水気を取ります。
- 化粧水を500円玉大(約2〜3プッシュ)手のひらに取り、こすらず押し込むようにハンドプレスします。コットンより手のひらのほうが摩擦を抑えやすいです。
- 完全に乾く前に次の層を重ねます。これを2〜4回、肌がもっちりして手に吸いつく感じになるまでくり返します。
- 必要に応じて美容液を1層加えます(保湿成分を含むものが向いています)。
- 乳液をパール1粒大なじませ、水分と油分の橋渡しをします。
- 最後にクリームでフタをします。乾燥が気になる日は、頬など乾きやすい部分に重ね付けを。
朝はメイク前のべたつきを避けて層を減らし、夜はしっかりめ、と時間帯で調整すると続けやすくなります。全体で5分ほどが目安です。大切なのは回数そのものより、最後のフタまでやりきることです。
濡れた肌に重ねるのはなぜ?タイミングの科学
「乾く前に塗る」がくり返し出てくるのには理由があります。研究では、化粧品に含まれる水分の状態(水分活性)がほんの少し変わるだけでも、角質層の水の含み方が変わると報告されています。肌がまだ湿っているうちは、次に重ねる化粧水がなじみやすく、層と層のあいだに水の逃げ道ができにくいと考えられます。
逆に、一つの層が完全に乾いてから次を塗ると、そのたびに表面の水分が飛んでしまい、「重ねているのに減っている」状態になりがちです。だから乾ききる前のリズムが大切なのです。とはいえ、びしょ濡れのまま何分も置くのは別の問題(ふやけ)につながるので、あくまで「しっとりしているうち」を目安にします。ほんの数十秒、手のひらで押さえて肌になじむのを待ってから次へ、というテンポが実用的です。
どんな人に向いている?肌質別のコツ
スキンフラッディングは、乾燥やごわつきが気になる人と特に相性がよい保湿法です。ただし肌質によって、力の入れどころが変わります。
乾燥肌の人は、化粧水の層を3〜4回としっかりめにして、フタもこっくりしたクリームを選ぶと、うるおいがとどまりやすくなります。オイリー肌や混合肌の人は、水分の層は控えめにし、フタは軽い乳液やジェルにするなど、油分の量で調整します。皮脂が出やすいTゾーンは薄く、乾く頬まわりは重ねる、と部分で変えるのもおすすめです。敏感に傾きやすい人は、まず少ない回数から試し、ヒリつきがないかを確かめながら層を増やしましょう。
やりすぎのサイン|ふやけ・摩擦に注意
良い手法でも、やりすぎると逆効果になります。長時間の重ね付けや濡れっぱなしの状態は、角質をふやけさせ、肌のバリアを一時的に緩めることがあります。研究でも、過度な水分は角質層をかえって乱す可能性が指摘されています。ふやけた状態は一見うるおって見えますが、乾いたあとにつっぱりを感じるなら重ねすぎのサインです。
また、何度も塗るぶん手やコットンでこする回数も増えがちで、摩擦はごわつきや乾燥の一因になります。目安は、押さえるだけ・層は5〜6回まで・肌がしっとりしたら止めること。ヒリつきや赤みが出たら回数を減らし、症状が続く場合は皮膚科への相談も選択肢です。「多いほど良い」ではなく「満たしてフタ」が合言葉です。
研究・参考情報
ここまでの内容の土台になっている、保湿の一般的な知見を整理します。
- 角質層の水分は、細胞内の天然保湿因子(NMF)と細胞間脂質という二つの仕組みで保たれるとされます。
- 油分でフタをする密封剤は水分の蒸発(TEWL)を抑え、ワセリンは特に高い密封力が報告されています。
- グリセリンなどのヒューメクタントは、水を抱え込み蒸発を穏やかにすることで、うるおいを助けるとされています。
まとめ
- スキンフラッディングは水分を薄く数回重ねて角質層を満たす保湿法です。
- うるおいのカギは角質層のNMFというスポンジ。水は重ねるだけでは蒸発しやすいです。
- 最後に油分でフタをして初めて、重ねた水分が肌にとどまります(TEWLの考え方)。
- 手順は濡れた肌→化粧水を2〜4回→乳液→クリーム、こすらず押さえるのが基本です。
- やりすぎ(ふやけ・摩擦)は逆効果。層は5〜6回までにして、しっとりしたら止めましょう。
監修・確認
ORIA Journal 編集部 編集部
ORIA Journalは、紫外線とスキンケアに関する誠実で分かりやすい情報を届ける編集部です。記事は編集部が作成し、薬機法・景品表示法の観点から表現上のリスクを確認したうえで公開しています。
よくある質問
スキンフラッディングは毎日やっても大丈夫ですか?
肌の様子を見ながらであれば、毎日の保湿として取り入れて問題ありません。ただし長時間の濡れっぱなしや過度な重ね付けは角質をふやけさせることがあるため、層は5〜6回までを目安にし、しっとりしたら止めましょう。ヒリつきや赤みが出たら回数を減らしてください。
化粧水は何回くらい重ねればいいですか?
2〜4回を目安に、肌がもっちりしてきたら十分です。1回あたり500円玉大(約2〜3プッシュ)を、完全に乾く前に重ねていきます。回数を増やすことより、最後に乳液やクリームで油分のフタをすることのほうが大切です。
化粧水だけをたくさん重ねれば潤いますか?
水分だけを重ねても、フタがないと蒸発しやすく、塗った水と一緒に肌本来の水分まで奪われて、かえって乾くことがあります。化粧水で満たしたあとに乳液・クリームなどの油分でフタをすることで、うるおいがとどまりやすくなります。
オイリー肌でもスキンフラッディングはできますか?
できます。皮脂が気になる場合は、化粧水の層をやや控えめにし、フタは軽めの乳液やジェルタイプにするなど、油分の量を調整するとべたつきにくくなります。乾きやすい頬まわりだけ重ね付けを厚くするのも一つの方法です。
濡れた肌に塗るのはなぜですか?
肌が少し湿っているうちのほうが化粧水がなじみやすく、角質層に水分を含ませやすいためです。ただしびしょ濡れのまま長く置くとふやけの原因になるので、タオルで軽く押さえてから、乾ききる前に始めるのが目安です。
参考文献
- Verdier-Sévrain S, Bonté F. "Skin hydration: a review on its molecular mechanisms." J Cosmet Dermatol. 2007;6(2):75-82. PMID: 17524122 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17524122/
- Sethi A, Kaur T, Malhotra SK, Gambhir ML. "Moisturizers: The Slippery Road." Indian J Dermatol. 2016;61(3):279-287. PMID: 27293248 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27293248/
- Björklund S, Engblom J, Thuresson K, Sparr E. "Glycerol and urea can be used to increase skin permeability in reduced hydration conditions." Eur J Pharm Sci. 2013 — 関連: 水分活性と低分子ヒューメクタントによる角質層の水和・透過性への影響. PMID: 24786192 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24786192/
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。肌の状態やトラブルにお悩みの場合は、皮膚科などの専門医にご相談ください。