スラッギング(封包法)とは|うるおいを閉じ込める乾燥肌ケアの手順と注意点

スラッギング(封包法)は、ワセリンなどでフタをして肌の水分蒸発を抑えるお手入れです。TEWLを抑える仕組み、正しい手順、脂性肌・ニキビ肌での向き不向きと頻度の目安を、データをもとにやさしく整理します。

肌のバリア機能とは何か

この記事のポイント

  • スラッギング(封包法)は、スキンケアの最後にワセリンなどの油分でフタをして、肌の水分の蒸発(TEWL)を抑えるお手入れ方法です。
  • ワセリンは水分を“足す”のではなく“閉じ込める”ため、うるおいを与えた後の最後の仕上げに使うのが原則です。
  • 皮脂の多い肌やニキビができやすい肌、部位によってはむれや毛穴づまりの一因になりうるため、頻度や範囲を調整するのが安心です。

乾燥する季節、「クリームをたっぷり塗っているのに、朝起きると肌がつっぱる」と感じたことはありませんか。実は、うるおいは足すだけでなく“逃がさない”工夫をしないと、塗ったそばから空気中へ蒸発してしまいます。この記事では、話題のスラッギング(封包法)で水分の蒸発を抑える仕組みと、今日からできる正しい手順、そして意外と知られていない「向き・不向き」まで、データをもとにやさしく整理します。

スラッギング(封包法)とは?

スラッギングとは、スキンケアの最後にワセリンなどの油分で肌にフタをして、水分の蒸発を防ぐお手入れ方法です。英語の slug(ナメクジ)が名前の由来で、しっとりつややかに見える仕上がりからこう呼ばれるようになりました。日本語では封包法オクルージョン(密封)とも言います。

ポイントは、スラッギングが「うるおいを与える」お手入れではなく、「すでにあるうるおいを閉じ込める」お手入れだという点です。ここを取り違えると、せっかくの一手間が空回りしてしまうことがあります。化粧水や乳液で水分と保湿成分を届けたうえで、いちばん外側に油膜のフタを重ねる——この順番が土台になります。だからこそ、乾燥がつらい冬や、エアコンで空気が乾く環境と相性がよいとされています。


なぜワセリンで乾燥肌ケアができるの?

結論から言うと、ワセリンが肌の表面に薄い膜をつくり、水分が空気中へ逃げる量を大きく抑えるからです。肌からは、意識しなくても常に水分がじわじわと蒸発しています。これをTEWL(経表皮水分蒸散量/Transepidermal Water Loss)と呼び、乾燥肌ではこの値が高くなりやすいことが知られています。

ワセリンのように水をはじく油分で表面を覆うと、この蒸発の通り道にフタをした状態になります。ある総説では、ワセリンは5%以上の濃度でTEWLを約98%抑えると報告されており、これは油性の保湿成分のなかでも際立って高い数字です。ラノリン・ミネラルオイル・シリコーン(ジメチコンなど)が20〜30%ほどとされるのと比べると、その差は大きいことが分かります。

さらに、ワセリンは表面に乗るだけでなく、角質層の細胞のすき間に入り込んで働くことも研究で示されています。単なる“ラップ”のような膜ではなく、角質のすき間を埋めるように広がるため、フタとしての役割を果たしやすいと考えられています。研究では、こうした封包によって肌のバリア機能を保つ助けになると報告されていますが、効果の感じ方には個人差があります。

種類代表的な成分TEWLを抑える目安使い勝手の特徴
ワセリンペトロラタム約98%フタの力が高い。ベタつきやすい
ラノリン羊毛由来の油分20〜30%しっとりだが独特の質感
ミネラルオイル流動パラフィン20〜30%軽い使用感でのびがよい
シリコーンジメチコンなど20〜30%さらっとしてベタつきにくい

数字だけを見るとワセリンが飛び抜けていますが、フタの力が強い=誰にでも最適とは限りません。ここが次の大切なポイントです。


保湿成分は3タイプ?ワセリンはどこに位置する?

スラッギングを正しく使ううえで、保湿成分をおおまかに3つのタイプに分けて考えると分かりやすくなります。役割が違うので、組み合わせと順番が意味を持つのです。

  • ヒューメクタント(吸湿タイプ):グリセリンやヒアルロン酸など、水分を抱え込んで肌にとどめる成分。化粧水や美容液に多く含まれます。
  • エモリエント(補整タイプ):スクワランや植物油など、角質のすき間を埋めて肌当たりをなめらかに整える成分。乳液やクリームの中心です。
  • オクルーシブ(密封タイプ):ワセリンやミネラルオイルなど、表面にフタをして水分の蒸発を抑える成分。スラッギングの主役はここです。

つまりワセリンは密封タイプの代表格で、水分をとどめる力(ヒューメクタント)や肌を整える力(エモリエント)は主な役割ではありません。だからこそ、吸湿タイプで水分を用意し→補整タイプで整え→密封タイプでフタ、という流れが、封包法の効果を引き出す土台になります。この3タイプがそろって初めて、「与えて・整えて・逃がさない」という一連のお手入れが完成するわけです。順番が逆だと、フタの下に閉じ込めるうるおいが足りず、期待した手ごたえにつながりにくくなります。


スラッギングは万人向けではない?

結論から言うと、スラッギングはすべての人・すべての肌に向くわけではありません。いちばん見落とされがちなのが、ワセリンは水分を“足さない”という事実です。

ワセリンはあくまで蒸発を防ぐフタであって、それ自体がうるおいを供給するわけではありません。ですから、乾いた肌にそのまま塗っても、閉じ込める水分がないため、しっとり感につながりにくいのです。カラカラのスポンジにラップをかけても水は増えないのと同じで、「うるおいを与えてから、最後にフタ」という順番が欠かせません。この一手間を飛ばすと、乾きを閉じ込めてしまうことさえあります。

また、フタの力が強いほど、肌質によってはデメリットにもなります。皮脂が多い肌やニキビができやすい肌では、皮脂や汗が逃げにくくなり、毛穴のつまりやむれの一因になりうると指摘されています。特にTゾーンや小鼻など皮脂の多い部位、汗をかきやすい日は避けるか、顔全体ではなく乾燥が気になる部分だけに絞ると安心です。

頻度も“毎日たっぷり”が正解とは限りません。まずは乾燥がつらい夜だけ、週に2〜3回から様子を見て、肌の調子に合わせて回数や範囲を調整するのがおすすめです。乾燥が落ち着く季節や、湿度が高くベタつきやすい日は、無理に続けずお休みするくらいの気持ちで十分です。

もう一つ見落とされがちなのが、フタは“汚れや古い角質も一緒に閉じ込める”という点です。だからこそ、塗る前の肌が清潔であること、そして翌朝はしっかり洗い落とすことがセットになります。塗りっぱなしで一日を過ごすお手入れではない、と覚えておくと安心です。合わないと感じたときは中止し、赤み・かゆみ・吹き出物などが続く場合は、自己判断を続けずに皮膚科への相談を検討してください。


スラッギングの正しいやり方は?

やり方はシンプルですが、順番と量を守ることが仕上がりを大きく左右します。フタをする前に、閉じ込めるうるおいを用意しておく——この前提を意識しながら進めてみてください。

  1. やさしく洗顔する。 ゴシゴシこすらず、余分な皮脂や汚れだけを落とします。清潔な肌がスタートラインです。
  2. 化粧水で水分を届ける。 ここで肌に“閉じ込める水分”を用意します。乾いたまま次に進まないのがコツです。
  3. 乳液・保湿クリームでうるおいを重ねる。 保湿成分でしっとりさせてから、フタの準備を整えます。
  4. ワセリンをごく少量、薄くのばす。 米粒1〜2粒ほどを手のひらで温め、乾燥が気になる部分に薄く広げます。厚塗りは不要で、むしろむれの原因になります。
  5. 目もと・小鼻・口まわりは量を控える。 皮脂の多い部位やニキビが気になる箇所は避けるか、ごく薄くにとどめます。
  6. 朝はしっかり洗い落とす。 夜に行った場合は、翌朝の洗顔でリセットし、日中は塗ったままにしないのが基本です。
  7. 日中の紫外線対策は別に行う。 ワセリンは日やけ止めの代わりにはなりません。朝のお手入れとUVケアは分けて考えます。

最初は週2〜3回・乾燥する部分だけから始め、肌の様子を見ながら増減させると失敗が少なくなります。


研究・参考情報

  • 総説では、ワセリンは5%以上の濃度でTEWLを約98%抑えると報告され、ラノリン・ミネラルオイル・シリコーンの20〜30%と比べて高い封包力を示すとされています。
  • ワセリンは表面に膜をつくるだけでなく、角質層のすき間に入り込んで働くことが研究で示されています。
  • 封包によって肌のバリア機能を保つ助けになりうると報告されていますが、皮脂や汗が多い条件ではむれ・毛穴づまりの一因になりうる点も指摘されています。効果や相性には個人差があります。
  • 保湿成分は吸湿(ヒューメクタント)・補整(エモリエント)・密封(オクルーシブ)の3タイプに整理され、ワセリンは密封タイプに位置づけられます。水分を与える工程と組み合わせてこそフタの役割が生きる、という順番の考え方が一般的に知られています。

まとめ

  • スラッギング(封包法)は、スキンケアの最後にワセリンなどでフタをして、肌の水分蒸発(TEWL)を抑えるお手入れです。
  • ワセリンは油性成分のなかでも封包力が高く、報告では5%以上でTEWLを約98%抑えるとされます。
  • ただしワセリンは水分を“足さない”ため、化粧水・乳液でうるおいを与えた後の最後の仕上げに使うのが原則です。
  • 皮脂の多い肌・ニキビができやすい肌・皮脂の多い部位では、むれや毛穴づまりの一因になりうるため、範囲や頻度を調整します。
  • まずは乾燥する夜に少量から。合わないときは中止し、症状が続く場合は皮膚科への相談を検討しましょう。

監修・確認

ORIA Journal 編集部 編集部

ORIA Journalは、紫外線とスキンケアに関する誠実で分かりやすい情報を届ける編集部です。記事は編集部が作成し、薬機法・景品表示法の観点から表現上のリスクを確認したうえで公開しています。

よくある質問

スラッギングにはワセリン以外を使ってもいいですか?

ワセリンはフタの力が高く、封包法でよく使われますが、必ずしもワセリンでなければいけないわけではありません。ミネラルオイルやシリコーン(ジメチコンなど)を含むクリームも油膜をつくりますが、水分の蒸発を抑える度合いはワセリンより穏やかとされています。ベタつきが苦手な方は、質感の軽いフタ役から試すのも一つの方法です。

毎日スラッギングをしても大丈夫ですか?

肌質や季節によります。乾燥がつらい時期に夜だけ行うぶんには取り入れやすいですが、皮脂が多い方やニキビができやすい方が毎日顔全体に厚く塗ると、むれや毛穴づまりの一因になりうると指摘されています。まずは週2〜3回・乾燥する部分だけから始め、肌の様子を見て調整すると安心です。

乾いた肌にワセリンを直接塗れば保湿になりますか?

ワセリンは水分を“足す”のではなく“閉じ込める”役割です。乾いた肌にそのまま塗っても、閉じ込める水分がないため、しっとり感にはつながりにくいと考えられます。化粧水や乳液でうるおいを届けたうえで、最後の仕上げとして薄く重ねるのが基本の順番です。

ニキビができやすいのですが、スラッギングは避けるべきですか?

皮脂が多くニキビができやすい肌では、フタの力が強いワセリンで皮脂や汗が逃げにくくなり、むれや毛穴づまりの一因になりうると指摘されています。顔全体ではなく、口まわりや頬など乾燥が気になる部分だけに薄く使うなど範囲を絞り、赤みや吹き出物が続く場合は中止して皮膚科への相談を検討してください。

スラッギングをすれば日やけ止めは省けますか?

いいえ、省けません。ワセリンは水分の蒸発を防ぐフタであって、紫外線を防ぐ働きはありません。日中の紫外線対策は日やけ止めで別に行い、封包のお手入れとUVケアは分けて考えてください。

参考文献

  • Sethi A, Kaur T, Malhotra SK, Gambhir ML. "Moisturizers: The Slippery Road." Indian J Dermatol. 2016;61(3):279-287. doi:10.4103/0019-5154.182427. PMID: 27293248 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27293248/
  • Ghadially R, Halkier-Sorensen L, Elias PM. "Effects of petrolatum on stratum corneum structure and function." J Am Acad Dermatol. 1992;26(3 Pt 2):387-396. PMID: 1564142 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1564142/
  • Czarnowicki T, Malajian D, Khattri S, et al. "Petrolatum: Barrier repair and antimicrobial responses underlying this 'inert' moisturizer." J Allergy Clin Immunol. 2016;137(4):1091-1102.e7. PMID: 26559322 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26559322/

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。肌の状態やトラブルにお悩みの場合は、皮膚科などの専門医にご相談ください。

SUPERVISED BY ORIA Journal 編集部

本記事は公開されている学術情報をもとに編集部が作成し、専門知見をもとに内容を確認しています。診断・治療に代わるものではありません。

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