この記事のポイント
- グリチルリチン酸2Kは甘草(カンゾウ)由来の水溶性成分で、医薬部外品では肌荒れを防ぐ有効成分として広く配合されてきた定番です。
- 似た名前のグリチルレチン酸は「糖が外れた芯の部分」で油になじみやすく、水溶性の2Kと処方によって使い分けられます。
- 同じ成分でも、その製品が医薬部外品か化粧品かで表示できる言葉が変わるため、成分名だけで効果を早合点しないことが大切です。
「グリチルリチン酸2K」という名前を成分表示で見かけても、何をする成分なのか、そして似た名前のグリチルレチン酸とどう違うのか、迷ってしまう方は少なくありません。実はこの成分は、甘草(カンゾウ)という植物から生まれ、医薬部外品では「肌荒れを防ぐ」有効成分として長く使われてきた定番です。この記事では、名前の似た成分の使い分けや、医薬部外品と化粧品で言えることの違いを、仕組みと区分から整理してやさしく解説します。
グリチルリチン酸2Kとは?甘草から生まれた成分
グリチルリチン酸2Kは、マメ科の植物・甘草(カンゾウ)の根から取り出した成分をもとにした、水に溶けやすい素材です。
正式にはグリチルリチン酸ジカリウムといい、「2K」はカリウム(K)が2つ結びついた塩であることを表しています。もとになるグリチルリチン酸は甘草に含まれる甘み成分で、砂糖の数十倍もの甘さをもつとされるほど特徴的な物質です。ただ、そのままでは水に溶けにくいため、カリウムと結びつけて水になじみやすくしたのがグリチルリチン酸2K、というわけです。化粧水や美容液など、水を主体とした処方に配合しやすいのは、この性質のおかげです。
甘草は漢方や食品の甘味料としても古くから使われてきた身近な植物で、英語ではリコリスと呼ばれます。その根に含まれる成分が、形を変えてスキンケアにも活かされている、と考えると身近に感じられるかもしれません。
グリチルリチン酸2Kとグリチルレチン酸はどう違う?
名前はよく似ていますが、糖がついているかどうかが両者の一番の違いです。
グリチルリチン酸は甘草の主成分で、グリチルレチン酸という土台に糖(グルクロン酸)が2つ結びついた構造をしています。専門的にはサポニン(配糖体)という仲間で、糖がついている分だけ水になじみやすい性質があります。これをさらにカリウムと結びつけて水溶性を高めたのが、グリチルリチン酸2Kです。
一方のグリチルレチン酸は、グリチルリチン酸から糖が外れた芯の部分にあたります。糖がない分だけ油になじみやすく、エノキソロンや18β-グリチルレチン酸という名前で呼ばれることもあります。クリームなど油分を含む処方では、このグリチルレチン酸や、その誘導体であるステアリルグリチルレチネートが選ばれることがあります。
| 名前 | 構造の特徴 | なじみやすさ | よく使われる処方 |
|---|---|---|---|
| グリチルリチン酸 | 甘草の主成分。糖が2つ付いた配糖体 | 水寄り | 原料の状態 |
| グリチルリチン酸2K | 上記をカリウム塩にしたもの | 水に溶けやすい | 化粧水・美容液など |
| グリチルレチン酸(エノキソロン) | 糖が外れた芯の部分 | 油になじみやすい | クリーム・乳液など |
| ステアリルグリチルレチネート | グリチルレチン酸の誘導体 | 油寄り | クリームなど |
つまり、同じ甘草由来のファミリーでありながら、水になじむか油になじむかで使い分けられている、と捉えると分かりやすくなります。処方が水っぽいアイテムなら2K、こっくりしたクリームならグリチルレチン酸系、という具合に、剤形との相性で選ばれているのです。
なぜ医薬部外品で「肌荒れを防ぐ」成分として広く使われる?
グリチルリチン酸2Kは、医薬部外品(薬用化粧品)の有効成分として認められており、「肌荒れを防ぐ」目的で広く配合されてきました。
研究の面では、甘草由来のグリチルリチン酸やグリチルレチン酸について、抗炎症作用が数多く報告されています(Int J Cosmet Sci, 2019 ほか)。仕組みとしては、炎症にかかわる物質の生成を抑える方向に働くと考えられていて、動物を使った実験でも、赤みや腫れの目安が抑えられたという報告があります(Int J Mol Sci, 2023)。こうした背景から、敏感に傾きやすい肌を落ち着いた状態に保つ土台として、長く選ばれてきました。
ただし大切な注意点があります。これらは基礎研究や動物実験、あるいは医薬部外品としての位置づけにもとづく知見であり、化粧品に配合したからといって「炎症を抑える」「肌荒れを治す」と言えるわけではありません。化粧品におけるグリチルリチン酸2Kは、あくまで肌荒れを防ぎ、肌をすこやかに保つことで知られる成分、という位置づけになります。
医薬部外品と化粧品では、言えることがどう違う?
見落とされがちですが、同じグリチルリチン酸2Kが入っていても、その製品が「医薬部外品」か「化粧品」かで、パッケージに書ける言葉が変わります。ここは名前や成分表示だけを見ていると気づきにくい、実用的なポイントです。
医薬部外品(薬用化粧品)は、配合した有効成分の働きについて国の承認を受けた製品で、「肌あれ・あれ性」などに対する、あらかじめ定められた効能を表示できます。一方、化粧品には「有効成分」という区分そのものがなく、たとえグリチルリチン酸2Kが入っていても、表現できるのは化粧品の効能の範囲にとどまります。具体的には「肌荒れを防ぐ」「肌をすこやかに保つ」といった言い方です。
| 見る点 | 医薬部外品(薬用化粧品) | 化粧品 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 承認された有効成分を配合 | 有効成分という区分はない |
| 言える効能 | 定められた効能(肌あれ 等)を表示可 | 化粧品の効能範囲(肌荒れを防ぐ 等) |
| 成分の書かれ方 | 「有効成分」として明記 | その他の成分として表示 |
| 読み手の注意 | 効能は承認された範囲に限られる | 効能を保証するものではない |
だからこそ、成分名が同じでも「効く」と早合点しない。同じグリチルリチン酸2Kでも、その製品が医薬部外品か化粧品かで語れることが違い、期待できる範囲も表示のとおりに読むのが誠実です。成分の名前が同じであることは、効果が同じであることを意味しない——この区分の感覚をもっておくと、宣伝文句に流されにくくなります。
配合濃度や使い方の目安は?
グリチルリチン酸2Kは、多くの製品でごく少量配合されています。医薬部外品では有効成分としての配合量に一定の範囲が定められていますが、化粧品では正確な数値が公開されないことが多く、成分表示の順番からおおよその位置を推し量る程度になります。
使い方としては、特別なコツが必要な成分ではなく、化粧水や美容液などふだんのスキンケアの中に自然に取り入れられるのが利点です。水になじみやすいので、みずみずしい使用感のアイテムに向いています。肌がゆらぎやすいと感じる時期に、こうした成分を含むアイテムを選んでみる、という取り入れ方が現実的です。
ほかの成分とはどう組み合わせる?
組み合わせを考えるときも、水溶性という性質が手がかりになります。
グリチルリチン酸2Kは水になじむため、ヒアルロン酸やグリセリンといった水性の保湿成分と方向性が近く、うるおいを保ちながら肌をすこやかに整えたい場面で一緒に使いやすい成分です。油分を含むクリームでフタをする役割と組み合わせれば、水分を抱える土台と、それを逃しにくくする膜という役割分担にもなります。
ただし、複数の成分を重ねるほど、肌への刺激の可能性も足し算になります。甘草由来だからやさしい、と決めつけず、あれもこれもと欲張らずに、自分の肌が心地よいと感じる組み合わせを少しずつ確かめていくのが安心です。
注意点:やさしさは処方と肌の相性で決まる
甘草由来と聞くとおだやかな印象がありますが、誰にでも刺激がない、とは言い切れません。やさしさは成分そのものだけでなく、処方全体や肌の状態、その日のコンディションによっても変わり、個人差があります。
はじめて使うアイテムは、いきなり顔全体に広げず、少量から試すのが安心です。使ってみて赤みやかゆみなど気になる変化が続くときは、自己判断で使い続けず、皮膚科への相談を検討してください。成分の性質と区分を知ったうえで、自分の肌の反応を丁寧に見ていく——それが、名前のイメージだけに頼らない選び方につながります。
研究・参考情報
甘草由来のグリチルリチン酸・グリチルレチン酸については、皮膚科学の総説(Int J Cosmet Sci, 2019)で、抗炎症・抗酸化・抗菌といった性質が整理されています。また、グリチルリチン酸のカリウム塩(ジカリウム)を用いた動物実験(Int J Mol Sci, 2023)では、傷の治り方や炎症の目安に関する変化が報告されています。さらに、グリチルレチン酸を皮膚に用いた基礎研究(2011年)もあります。いずれも基礎研究・動物実験や医薬部外品としての位置づけにもとづく知見であり、化粧品として塗ったときの効果を保証するものではありません。
まとめ
- グリチルリチン酸2Kは甘草(カンゾウ)由来の水溶性成分で、医薬部外品では「肌荒れを防ぐ」有効成分として広く配合されてきた定番です。
- 似た名前のグリチルレチン酸は「糖が外れた芯の部分」で油になじみやすく、水溶性の2Kと処方によって使い分けられます。
- 甘草由来成分には抗炎症作用が研究で報告されていますが、化粧品では「炎症を抑える」ではなく肌荒れを防ぎ、すこやかに保つ成分という位置づけです。
- 同じ成分でも、医薬部外品か化粧品かで表示できる言葉が変わるため、成分名だけで効果を早合点しないことが大切です。
- やさしさは処方と肌の相性で決まり個人差があるので、少量から試し、気になる症状が続くときは皮膚科への相談を検討しましょう。
監修・確認
ORIA Journal 編集部 編集部
ORIA Journalは、紫外線とスキンケアに関する誠実で分かりやすい情報を届ける編集部です。記事は編集部が作成し、薬機法・景品表示法の観点から表現上のリスクを確認したうえで公開しています。
よくある質問
グリチルリチン酸2Kとグリチルレチン酸は何が違うのですか?
一番の違いは糖がついているかどうかです。グリチルリチン酸は甘草の主成分で、グリチルレチン酸に糖が2つ結びついた構造をしており、そのカリウム塩が水に溶けやすいグリチルリチン酸2Kです。グリチルレチン酸は糖が外れた芯の部分で油になじみやすく、クリームなどの処方で使われることがあります。同じ甘草由来のファミリーですが、水と油のなじみやすさで使い分けられています。
グリチルリチン酸2Kは肌荒れを治してくれるのですか?
化粧品に配合されたグリチルリチン酸2Kは、肌荒れを治すものではなく、肌荒れを防ぎ、肌をすこやかに保つことで知られる成分という位置づけです。研究では甘草由来成分の抗炎症作用が報告されていますが、それは基礎研究や医薬部外品としての知見であり、化粧品として塗ったときの効果を保証するものではありません。肌の不調が続くときは皮膚科への相談を検討してください。
医薬部外品と化粧品で、グリチルリチン酸2Kの扱いは違うのですか?
はい。医薬部外品(薬用化粧品)では承認された有効成分として配合され、定められた効能を表示できます。一方、化粧品には有効成分という区分がなく、同じ成分が入っていても表現できるのは化粧品の効能範囲(肌荒れを防ぐ 等)にとどまります。成分名が同じでも、製品の区分によって言えることが変わる点に注意しましょう。
甘草由来だから刺激が少なくて安心ですか?
甘草由来だから誰にでも刺激がない、とは言い切れません。やさしさは成分そのものだけでなく処方全体や肌の状態、その日のコンディションによっても変わり、個人差があります。はじめて使うアイテムは少量から試し、赤みやかゆみなど気になる変化が続くときは自己判断で使い続けず、皮膚科への相談を検討してください。
グリチルリチン酸2Kはどんな成分と組み合わせやすいですか?
水になじみやすい性質があるため、ヒアルロン酸やグリセリンといった水性の保湿成分と方向性が近く、一緒に使いやすい成分です。油分を含むクリームでフタをする役割と組み合わせるのも合理的です。ただし成分を重ねるほど刺激の可能性も足し算になるため、欲張らず、自分の肌が心地よいと感じる組み合わせを少しずつ確かめるのが安心です。
参考文献
- Kowalska A, Kalinowska-Lis U. "18β-Glycyrrhetinic acid: its core biological properties and dermatological applications." International Journal of Cosmetic Science. 2019;41(4):325-331. PMID: 31166601 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31166601/
- Leite CDS, Bonafé GA, Pires OC, et al. "Dipotassium Glycyrrhizininate Improves Skin Wound Healing by Modulating Inflammatory Process." International Journal of Molecular Sciences. 2023;24(4):3839. PMID: 36835248 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36835248/
- Yamaguchi K, Kato M, Ozawa K, et al. "Glycyrrhetinic acid prevents cutaneous scratching behavior in mice elicited by substance P or PAR-2 agonist." European Journal of Pharmacology. 2011;670(1):175-179. PMID: 21925497 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21925497/
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。肌の状態やトラブルにお悩みの場合は、皮膚科などの専門医にご相談ください。