この記事のポイント
- 妊娠・産後はホルモンの変化で色素が濃くなりやすい時期とされ、紫外線を防ぐUVケアの意味がむしろ大きくなると考えられています。
- この時期は肌が敏感へ傾きやすいとされるため、刺激の要因が少なめの散乱剤中心の処方やパッチテストが安心につながります(やさしさには個人差があります)。
- 日焼け止めは散乱剤と吸収剤の違いを知り、規定量をムラなく塗って2〜3時間ごとに塗り直すのが基本。迷うときは医師・薬剤師に相談しましょう。
「妊娠中や産後は、肌に負担をかけたくないから、日焼け止めもお休みしたほうがいいのかな」——そう迷う方は少なくないかもしれません。でも、妊娠・産後はホルモンの変化で色素が濃くなりやすい時期とされ、紫外線を防ぐUVケアの意味はむしろ大きくなると考えられています。この記事では、妊娠中・産後になぜUVケアが大切とされるのか、そして日焼け止めや成分をどう選べばよいかを、研究の知見を交えてやさしく整理します。
なぜ妊娠中・産後は、UVケアの意味が大きいの?
結論から言うと、妊娠・産後はホルモンの変化で色素が濃くなりやすい時期とされ、そこに紫外線が関わると考えられているからです。妊娠中はエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンが増え、肌の色をつくる細胞(メラノサイト)が刺激を受けやすくなるとされています。そこへ紫外線が加わると、頬などに左右対称の色ムラ(いわゆる「妊娠期のマスク」=肝斑)が出やすい、と報告されています。
ここで大切なのは、肝斑そのものを消したり治したりするのは化粧品の役割ではないということです。化粧品でできるのは、日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ手助けまで。肝斑が気になるときは、自己判断で強い方法を試すより、皮膚科など専門家に相談するのが安心です。だからこそ、この時期のUVケアは「濃くしないために、まず日やけを防ぐ」という発想が向いています。
数字の面でも、紫外線対策の意味は小さくありません。妊娠中の色素沈着をあつかったレビューでは、妊娠の早い時期から相性のよい日焼け止めを続けることで、妊娠中の色素沈着(肝斑)の発生を大きく抑えられたとする報告が紹介されています。つまり、シミ・ソバカスが気になってから慌てるより、早めに・こつこつ紫外線を防ぐほうが理にかなっている、というわけです。
妊娠中・産後の肌は、なぜゆらぎやすいの?
ひとことで言うと、ホルモンや生活の変化で、一時的に敏感へ傾きやすいとされるからです。妊娠・産後はホルモンのバランスが大きく動き、睡眠不足や疲れも重なりがちです。その影響で、いつもは平気だった化粧品でもヒリつきやかゆみを感じる、といった「肌のゆらぎ」を経験する方がいます。
もっとも、ゆらぎ方には大きな個人差があります。まったく変わらない方もいれば、敏感さを強く感じる方もいて、「妊娠したら必ず肌が弱くなる」わけではありません。だからこそ、成分の刺激の要因が少なめの処方を選んだり、あとで触れるパッチテストで自分の肌との相性を確かめたりすることが、安心につながります。
なお、「ノンケミカル(紫外線吸収剤フリー)だから絶対にやさしい」と言い切ることはできません。やさしさは、処方全体と肌の相性、そして個人差で決まるものです。この時期は「これなら絶対安心」と決めつけず、自分の肌の反応を見ながら選ぶ姿勢が役立ちます。
日焼け止めは、成分でどう選べばいい?
結論の目安を先に言うと、紫外線を防ぐ成分には大きく「紫外線散乱剤」と「紫外線吸収剤」の2タイプがあり、敏感に傾きやすい時期は散乱剤を中心にした処方が選ばれやすい傾向があります。散乱剤は酸化亜鉛・酸化チタンなどで、主に肌の表面で紫外線を反射・散乱させて防ぎます。吸収剤は紫外線を吸収して熱などに変えるタイプで、白浮きしにくく軽い使用感が得られやすいのが特徴です。
「新しい発見」になりやすいのは、成分が肌にとどまるのか、体内に移行しうるのかという視点です。JAMAに載ったランダム化試験では、吸収剤の一部(オキシベンゾンなど)を規定量くらい塗って使うと、血液中からFDAの基準値を超えて検出されたと報告されました。ただしFDA自身、「検出されたこと」=「体に害がある」ではなく、さらなる研究が必要で、日焼け止めをやめる理由にはならない、と説明しています。この点をふまえると、主に肌の表面にとどまるとされる散乱剤は、「体内への移行が気になる時期の安心材料」として選ばれやすい、と整理できます。散乱剤が吸収剤より「効果が高い・安全だ」という意味ではない点に注意してください。
| タイプ | 代表的な成分 | 紫外線への働き方 | この時期に選ばれやすい理由 |
|---|---|---|---|
| 紫外線散乱剤 | 酸化亜鉛・酸化チタン | 肌の表面で反射・散乱させる | 主に表面にとどまるとされ、刺激の要因が少なめとされる |
| 紫外線吸収剤 | オキシベンゾン 等 | 紫外線を吸収して熱などに変える | 白浮きしにくく軽い使用感。一部は体内へ移行との報告あり |
表からわかるように、どちらが一方的に優れているわけではなく、目的と肌の相性で選ぶのが基本です。使用感の軽さを重視するなら吸収剤入り、刺激の要因や体内移行の少なさを重視するなら散乱剤中心、と考えると整理しやすくなります。いずれにしても、妊娠中・産後の日焼け止め選びに迷ったら、医師や薬剤師に相談しながら決めると安心です。
敏感に傾きやすい時期のパッチテストは、どうやるの?
大切なのは、新しい日焼け止めを顔に本格的に使う前に、目立たない場所で試すことです。手順はシンプルなので、この時期はひと手間かけておくと安心です。
- 腕の内側など、やわらかい部分に、日焼け止めを十円玉くらいの範囲で薄くのばします。
- そのまま乾かして、24〜48時間ほど様子を見ます。その間は、こすったり洗い流したりしすぎないようにします。
- 赤み・かゆみ・ヒリつきなどが出たら、すぐに洗い流し、その製品の使用は控えます。気になる症状が続くときは皮膚科に相談します。
- 何も起きなければ、少量から顔でも試して、問題がなければふだん使いに進みます。
パッチテストは、肌トラブルを100%防ぐものではありません。それでも、合わないものにいきなり広い範囲で出会うリスクを下げられます。とくに肌がゆらぎやすいと感じる時期は、新しい製品ごとに試すくらいの気持ちでいると、余計な負担を避けやすくなります。
塗り方・塗り直しは、どうすればいい?
どんなに相性のよい日焼け止めでも、塗る量が少ないと、表示どおりの効果は出にくいとされています。SPFやPAは、肌1cm²あたり2mgという、実際よりやや多めの量を塗る試験にもとづく値だからです。目安として、顔ならパール粒2個分(または500円玉大)を、ムラなくのばすと不足しにくくなります。
そして、塗り直しはとても大切です。日焼け止めは汗や皮脂、こすれで少しずつ落ちるため、2〜3時間ごとの塗り直しが基本とされています。「一度塗れば一日中安心」「塗り直し不要」ではない、と考えておきましょう。SPF50・PA++++のような高い数値でも、塗り直しなしで完全に紫外線を防げるわけではありません。
数値そのものは、次のように読み解けます。SPFはおもにUVB(日やけで赤くなる紫外線)、PAはおもにUVA(肌の奥まで届き、じわじわ影響するとされる紫外線)を防ぐ目安です。日常づかいならSPF30前後・PA+++程度でも十分とされ、数値が高いほど肌への負担も一般に増えやすいので、シーンに合わせて選ぶのがおすすめです。あわせて、日傘・帽子・衣類で物理的に紫外線をさえぎると、日焼け止めだけに頼りすぎずにすみます。
研究・参考情報
- 妊娠中の色素沈着(肝斑)をあつかったレビューでは、ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)と紫外線が発生に関わるとされ、妊娠の早い時期から相性のよい日焼け止めを続けることで発生を大きく抑えられたとする報告が紹介されています(Zhao ら, 2024)。
- JAMAのランダム化試験では、紫外線吸収剤の一部を規定量ほど塗って使うと、血液中からFDAの基準値を超えて検出されたと報告されました。ただしFDAは、検出された事実がただちに害を意味するわけではなく、さらなる研究が必要だとしています(Matta ら, 2020)。
- 米国皮膚科学会(AAD)は、日常の紫外線対策として、SPF30以上・ブロードスペクトラム(UVA・UVBの両方をカバー)の日焼け止めを、こまめに塗り直しながら使うことをすすめています。
まとめ
- 妊娠・産後はホルモンの変化で色素が濃くなりやすい時期とされ、紫外線を防ぐUVケアの意味が大きくなると考えられています。
- 化粧品でできるのは日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ手助けまでで、肝斑が気になるときは皮膚科など専門家に相談しましょう。
- この時期は敏感へ傾きやすいとされるため、刺激の要因が少なめの散乱剤中心の処方やパッチテストが安心につながります(やさしさには個人差があります)。
- 成分は散乱剤(酸化亜鉛・酸化チタン)と吸収剤の2タイプがあり、目的と肌の相性で選ぶのが基本。迷ったら医師や薬剤師に相談を。
- 効果を活かすには規定量をムラなく塗り、2〜3時間ごとに塗り直すこと。日傘・帽子・衣類での物理的なUVカットも組み合わせましょう。
監修・確認
ORIA Journal 編集部 編集部
ORIA Journalは、紫外線とスキンケアに関する誠実で分かりやすい情報を届ける編集部です。記事は編集部が作成し、薬機法・景品表示法の観点から表現上のリスクを確認したうえで公開しています。
よくある質問
妊娠中は日焼け止めを使わないほうがいいですか?
一概に「使わないほうがよい」とは言えません。妊娠・産後はホルモンの変化で色素が濃くなりやすい時期とされ、紫外線を防ぐUVケアの意味はむしろ大きくなると考えられています。ただし肌が敏感へ傾きやすい時期でもあるため、刺激の要因が少なめの処方を選んだり、パッチテストで相性を確かめたりすると安心です。特定の製品を使ってよいか不安なときは、自己判断せず医師や薬剤師に相談してください。
散乱剤(ノンケミカル)と吸収剤は、どちらを選べばいいですか?
目的と肌の相性で選ぶのが基本です。散乱剤(酸化亜鉛・酸化チタンなど)は主に肌の表面にとどまるとされ、刺激の要因や体内への移行の少なさを重視する方に選ばれやすい傾向があります。吸収剤は白浮きしにくく軽い使用感が得られやすい一方、一部が体内へ移行したとする報告もあります。どちらが一方的に優れているわけではなく、「ノンケミカルだから絶対やさしい」とも言い切れません。迷うときは医師や薬剤師に相談しましょう。
妊娠中にできたシミや肝斑は、日焼け止めで消せますか?
消すことはできません。肝斑そのものを治したり消したりするのは化粧品の役割ではなく、化粧品でできるのは日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ手助けまでです。妊娠・産後の色素沈着はホルモンと紫外線が関わるとされるため、まずは日やけを防いで濃くしないことが現実的です。気になる場合は自己判断で強い方法を試さず、皮膚科など専門家に相談してください。
パッチテストはどうやればいいですか?
腕の内側など目立たない場所に日焼け止めを十円玉くらいの範囲で薄くのばし、乾かして24〜48時間ほど様子を見ます。赤み・かゆみ・ヒリつきなどが出たらすぐ洗い流し、その製品の使用は控えます。症状が続くときは皮膚科に相談してください。何も起きなければ少量から顔でも試します。パッチテストは肌トラブルを100%防ぐものではありませんが、合わないものに広い範囲で出会うリスクを下げられます。
日焼け止めのSPFやPAは、どのくらいの数値を選べばいいですか?
日常づかいならSPF30前後・PA+++程度でも十分とされています。SPFはおもにUVB、PAはおもにUVAを防ぐ目安で、数値が高いほど肌への負担も一般に増えやすいため、シーンに合わせて選ぶのがおすすめです。数値の高さより、規定量(顔ならパール粒2個分が目安)をムラなく塗り、2〜3時間ごとに塗り直すことが大切です。日傘・帽子・衣類での物理的なUVカットも組み合わせましょう。
参考文献
- Zhao L, Fu X, Cheng H. "Prevention of Melasma During Pregnancy: Risk Factors and Photoprotection-Focused Strategies." Clin Cosmet Investig Dermatol. 2024;17:2301-2310. doi:10.2147/CCID.S488663. PMID: 39430643 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39430643/
- Matta MK, Florian J, Zusterzeel R, et al. "Effect of Sunscreen Application on Plasma Concentration of Sunscreen Active Ingredients: A Randomized Clinical Trial." JAMA. 2020;323(3):256-267. doi:10.1001/jama.2019.20747. PMID: 31961417 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31961417/
- American Academy of Dermatology (AAD). "How to select a sunscreen." — https://www.aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-select-sunscreen
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。肌の状態やトラブルにお悩みの場合は、皮膚科などの専門医にご相談ください。