この記事のポイント
- UPFは衣類や日傘が紫外線をどれだけ通さないかを表す指標で、日焼け止めのSPFにあたる「布版のものさし」です。UPF50+なら生地を通り抜ける紫外線はおよそ2%にとどまります。
- 同じ道具でも、色が濃い・織りが密・濡れていない・体から離す(日傘)ほど防御が上がります。これは糸のすき間と光の散乱という物理で説明できます。
- 道具はすき間・照り返し・覆えない部位が必ず残るため、日焼け止めとの併用が基本です。完全に防げるわけではありません。
日傘や帽子、UVカットの服を、日焼け止めの「おまけ」くらいに考えていませんか。実は生地でどれだけ紫外線を防げるかは、UPFという指標できちんと数値化されていて、たとえばUPF50+なら生地を通り抜ける紫外線はおよそ2%にとどまります。この記事では、UPFという指標の意味と、色・織り・濡れ・距離といった条件で防御力がどう変わるのかを、数値と仕組みの両面からやさしく整理します。
UPFとは?生地版の「日焼け止めの数字」
UPFとは、衣類や日傘などの生地が紫外線をどれだけさえぎるかを表す指標で、日焼け止めのSPFにあたる「布版のものさし」です。日焼け止めに塗る量あたりの防御力を示すSPFがあるように、生地にはUPF(Ultraviolet Protection Factor)という別の数字が用意されています。名前は似ていますが、SPFは主に肌に塗る日焼け止めのUVB防御、UPFは生地を通り抜けるUV(UVAとUVBの両方)を測る指標で、対象がまったく違います。ここを混同すると数字の意味を取り違えてしまうので、最初に押さえておきたいところです。
数字の読み方はシンプルです。UPFは「生地がないときに比べて、通り抜ける紫外線が何分の1になるか」を表します。ですからUPF50なら、通す紫外線は1/50=約2%、言いかえれば約98%をさえぎるという意味になります。オーストラリア・ニュージーランドのUPF規格(AS/NZS 4399)では、この数値をもとに15・30・50・50+という等級で整理していて、50を超えるものは規格上いちばん上の区分(Excellent)として扱われます。
意外に見落とされがちなのが、普段着のUPFは思ったより低いことがあるという点です。ある研究では200枚以上の夏物衣料を調べたところ、およそ3枚に1枚はUPF15未満だったと報告されています。とくに白くて薄手の綿などは光を通しやすく、「服を着ているから安心」とは限りません。UPFは布ごとに大きく違う、というのがまず理解の出発点になります。
| UPFの値 | 通り抜ける紫外線の割合 | さえぎる紫外線の割合 | 規格の等級 |
|---|---|---|---|
| UPF15 | 約1/15(約6.7%) | 約93% | 最低ライン |
| UPF30 | 約1/30(約3.3%) | 約97% | Good |
| UPF50 | 約1/50(約2%) | 約98% | Excellent |
| UPF50+ | 1/50未満(約2%未満) | 98%超 | 規格上いちばん上の区分 |
なぜ生地でこれだけ紫外線を防げるの?
紫外線は糸に当たると吸収・散乱され、糸のすき間を通り抜けた分だけが肌に届くため、防御力は「すき間の少なさ」と「糸そのものの吸収力」で決まります。つまり生地は、壁のように完全にふさぐのではなく、細かな網目でどれだけ光をせき止められるかという発想で理解すると分かりやすいです。ここから、次の四つが効いてきます。
第一に、織り・編みの密度です。糸と糸のすき間が小さいほど、通り抜ける紫外線は減ります。目のつまった生地ほどUPFは高くなりやすく、逆にレースや粗い麻のように織りが粗いと、密度の高い糸でもすき間から光が抜けます。第二に、色の濃さです。濃い色や黒は紫外線をよく吸収するため、同じ素材・同じ織りなら、淡い色より濃い色のほうが防御に有利とされています。第三に、素材の種類です。ポリエステルは紫外線を吸収しやすい性質があり、綿は比較的光を通しやすいと報告されています。同じ薄さでも素材で差が出るわけです。第四に、単純な厚みです。生地が厚いほど光の通り道が長くなり、通り抜けにくくなります。
この四つは、どれも「魔法の加工」ではなく、光と繊維のあいだで起きる物理で説明がつきます。だからこそ、特別なUVカット表示のない服でも、濃い色・目のつまった織り・厚手という条件がそろえば、それなりに頼りになります。逆に、表示があっても薄くて粗ければ過信は禁物、という見極めができるようになります。
濡れる・伸びると、防御はどう変わるの?
同じ服でも、濡れたり引き伸ばされたりすると生地のUPFは下がることが研究で示されています。ここが、名前や見た目だけでは気づきにくい落とし穴です。
まず濡れについて。乾いた生地では、糸のあいだのすき間に空気が入っていて、この空気と繊維の境目で光がよく散乱されます。ところが水にぬれると、すき間の空気が水に置き換わり、光の散乱が減って、より多くの紫外線が通り抜けてしまいます。研究では、濡れた状態でUPFが目立って下がったと報告されており、汗や海・プールでぬれたTシャツは、乾いているときより光を通しやすくなると考えられます。「濡れた白シャツが透ける」あの現象は、見た目だけでなく紫外線に対しても起きている、とイメージすると腑に落ちます。
次に伸びです。生地が引き伸ばされると、糸と糸のすき間が広がって密度が下がり、通り抜ける光が増えます。体にぴったり張りつくストレッチ素材や、洗濯を重ねてヘタった生地は、この点で不利になりがちです。ここから導ける実践知はとてもシンプルで、「濡れていない・伸びていない・ゆったりめ」の状態のほうが、生地は本来の防御力を発揮しやすい、ということです。汗をかいたら乾いた一枚に替える、体を締めつけない服を選ぶ——こうした小さな工夫が、数字の裏づけを持って効いてきます。
日傘の効果はどのくらい?「体から離す」ほど有利な理由
日傘は頭上を覆うことで直射の紫外線を大きく減らせますが、地面からの照り返しには弱く、生地の性能と使い方で効果が変わります。まず良い面から見ると、UVカットをうたう日傘は直射の紫外線をかなり削減できるとされ、研究でも、UVを大きくカットする傘と、一般的なファッション傘とで遮蔽の差が出たことが報告されています。日傘の芯になるのは、これまで見てきたのと同じ色の濃さ・織りの密度・素材で、内側が暗い色だと照り返しの再反射を抑えやすいと考えられます。
ここで日傘ならではの論点が、「体から離れている」という距離です。服は肌に密着していますが、傘は頭上に浮いています。おかげで熱がこもりにくい一方、横や下から回り込む光や、アスファルト・水面・砂からの照り返しが届きやすくなります。研究でも、日傘だけに頼るより日焼け止めとの併用のほうが守りが手厚かったことが示されており、傘は「上からの直射」に強くても「下からの照り返し」には万能ではない、という理解が大切です。
もう一つ知っておきたいのが、日傘のUPF表示は、必ずしも検証されていないという点です。近年の調査では、UPFをうたう傘の多くでその数値が第三者に確かめられていなかったと指摘されています。表示は選ぶ手がかりにはなりますが、数字を鵜呑みにせず、生地の濃さ・厚み・織りの密度という物理もあわせて見るのが賢い選び方です。
日焼け止めとの併用が基本なのはなぜ?
道具は「面」で体を覆いますが、すき間・照り返し・覆えない部位が必ず残るため、日焼け止めとの併用が基本になります。どんなにUPFの高い服や傘でも、袖口・襟元・帽子から出る耳や首の後ろといった、布がとどかない場所は出てきます。日傘なら、傘からはみ出す腕や、照り返しが当たるあご下・脚などが盲点になりがちです。
だからこそ、露出する肌には日焼け止め、広い面は道具で覆うという役割分担が理にかなっています。日焼け止めは汗や時間で効果が落ちるため、2〜3時間ごとの塗り直しが目安とされ、道具でカバーできない照り返しやすき間を補ってくれます。逆に、日焼け止めだけでは塗りムラや塗り直し忘れが起きやすく、そこを服や傘が面で支える——というお互いの弱点を埋め合う関係です。「道具があるから塗らなくていい」でも「塗ったから何も覆わなくていい」でもなく、両方を重ねることで、現実的にいちばん抜けの少ない備えになります。
研究・参考情報
- UPFの規格(AS/NZS 4399)では、生地を通り抜ける紫外線をもとに15・30・50・50+の等級が定められ、UPF50は通過が約1/50(約2%)にあたります。色・織りの密度・素材・濡れ・伸びなどで実際の防御は変わるとされています。
- 市販の夏物衣料200枚以上を調べた研究では、約3割がUPF15未満で、普段着の紫外線防御には大きなばらつきがあると報告されています。
- 生地が濡れると空気が水に置き換わって光の散乱が減り、UPFが下がることが、繊維の測定と着用試験の両面から報告されています。
- 日傘・傘に関する研究では、UVカット性能に製品差があること、表示されたUPFが検証されていない例が多いこと、そして日焼け止めとの併用が引き続き勧められることが示されています。
まとめ
- UPFは衣類や日傘の紫外線防御を表す指標で、SPF(日焼け止め)とは別の「布版のものさし」です。UPF50=通過は約1/50(約2%)と読みます。
- 防御力は色の濃さ・織りの密度・素材・厚みという物理で決まります。UVカット表示がなくても、濃い色・目のつまった厚手なら頼りになります。
- 濡れる・伸びると防御は下がります。汗や水でぬれた生地、体に張りつく生地は、乾いてゆったりした状態より紫外線を通しやすくなります。
- 日傘は上からの直射に強く、下からの照り返しには弱い道具です。内側が暗い色だと再反射を抑えやすく、表示のUPFは検証されていない例もあるので過信しないことが大切です。
- 道具にはすき間・照り返し・覆えない部位が残るため、日焼け止めとの併用が基本。塗り直し(2〜3時間ごとの目安)と面での防御を重ねると、抜けの少ない備えになります。
監修・確認
ORIA Journal 編集部 編集部
ORIA Journalは、紫外線とスキンケアに関する誠実で分かりやすい情報を届ける編集部です。記事は編集部が作成し、薬機法・景品表示法の観点から表現上のリスクを確認したうえで公開しています。
よくある質問
UPFとSPFは何が違うのですか?
対象が違います。SPFは主に肌に塗る日焼け止めのUVB防御を表す指標で、UPFは衣類や日傘などの生地が紫外線(UVAとUVBの両方)をどれだけ通さないかを表す指標です。UPFは「生地がないときに比べて通り抜ける紫外線が何分の1になるか」を示し、たとえばUPF50なら通す量は約1/50(約2%)になります。名前は似ていますが別々のものさしなので、混同しないことが大切です。
UPF50+ならもう日焼け止めは要りませんか?
併用がおすすめです。UPF50+は生地を通り抜ける紫外線が約2%未満という高い性能ですが、防げるのは生地が覆っている部分だけです。袖口・襟元・帽子から出る耳や首の後ろ、日傘からはみ出す腕など、布がとどかない場所や地面からの照り返しは残ります。露出する肌には日焼け止め、広い面は道具で覆う、という役割分担で重ねるのが現実的です。
濃い色の服のほうが紫外線を防げるというのは本当ですか?
同じ素材・同じ織りで比べた場合、濃い色や黒は紫外線をよく吸収するため、淡い色より防御に有利とされています。ただし色だけで決まるわけではなく、織りや編みの密度、素材、厚みも大きく影響します。濃い色でも薄くて織りが粗ければ光は抜けますし、淡い色でも目のつまった厚手なら頼りになります。複数の条件をあわせて見るのがおすすめです。
濡れた服でも紫外線を防げますか?
乾いているときより通しやすくなる傾向があります。乾いた生地では糸のすき間の空気が光をよく散乱させますが、濡れるとその空気が水に置き換わって散乱が減り、より多くの紫外線が通り抜けると報告されています。汗や海・プールでぬれたTシャツは防御が下がりやすいので、可能なら乾いた一枚に着替えるか、日焼け止めや日傘とあわせて補うと安心です。
日傘のUPF表示はどこまで信じてよいですか?
表示は選ぶ手がかりになりますが、鵜呑みにしないほうが安心です。近年の調査では、UPFをうたう傘の多くでその数値が第三者に検証されていなかったと指摘されています。表示に加えて、生地の色の濃さ・厚み・織りの密度といった物理も確かめましょう。また日傘は上からの直射には強くても、地面からの照り返しには弱いため、日焼け止めとの併用が引き続き勧められています。
参考文献
- Gambichler T, Rotterdam S, Altmeyer P, Hoffmann K. "Protection against ultraviolet radiation by commercial summer clothing: need for standardised testing and labelling." BMC Dermatol. 2001;1:6. PMID: 11710968 — https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC59674/
- Gambichler T, Hatch KL, Avermaete A, Altmeyer P, Hoffmann K. "Influence of wetness on the ultraviolet protection factor (UPF) of textiles: in vitro and in vivo measurements." Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2002;18(1):29-35. PMID: 11982919 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11982919/
- Standards Australia / Standards New Zealand. "AS/NZS 4399:2017 Sun protective clothing — Evaluation and classification." 2017. (UPF等級 15/30/50/50+ の分類基準)— https://www.arpansa.gov.au/our-services/testing-and-calibration/ultraviolet-services/labelling-sun-protective-clothing/au-nz-standard
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。肌の状態やトラブルにお悩みの場合は、皮膚科などの専門医にご相談ください。