酸化亜鉛とは|紫外線を反射・散乱するUV散乱剤の働きと特徴

酸化亜鉛(Zinc Oxide)は日焼け止めに配合されるUV散乱剤の代表成分。UVA・UVBの両方を物理的に反射・散乱し、肌への刺激が少ないとされます。ノンケミカル処方の仕組み・配合濃度・他成分との相性まで科学的に解説します。

酸化亜鉛とは何か?

この記事のポイント

  • 酸化亜鉛はUVAとUVBの両方をカバーできる数少ないUV散乱剤で、肌の上で紫外線を反射・散乱して防御する。
  • 化学反応で紫外線を熱に変える「UV吸収剤(ケミカル)」と異なり、肌刺激が出にくいとされ、敏感肌向け処方にも使われる。
  • 紫外線防御効果は配合量や粒子の設計に左右されるため、SPF・PA表示と組み合わせて選ぶことが大切。

「ノンケミカル=肌に優しい」と聞いても、何がどう違うのか分からない方は多いはずです。その「ノンケミカル」を支える代表成分が酸化亜鉛(Zinc Oxide)で、仕組みを知ると日焼け止め選びが一段と明確になります。この記事では、酸化亜鉛の成分的な役割・仕組み・配合の目安・他成分との相性・注意点をファクトベースで整理します。


酸化亜鉛とは何か?

酸化亜鉛(英名: Zinc Oxide、化学式: ZnO)は、亜鉛と酸素からなる無機化合物です。白色の粉末で、化粧品の成分表示では「酸化亜鉛」と記載されます。別名・関連表記として「亜鉛華(あえんか)」と呼ばれることもあります。

日焼け止めにおいてはUV散乱剤(紫外線散乱剤)として機能し、いわゆる「ノンケミカル」処方の柱となる成分です。同じ散乱剤の仲間には酸化チタン(Titanium Dioxide)がありますが、UVAカバー範囲において酸化亜鉛の方が広いという特徴があります。また、日本では医薬部外品の有効成分としても認可されており(日焼け止め用途における使用上限濃度は25%)、化粧品グレードの製品にも配合されます。


酸化亜鉛が紫外線を防ぐ仕組みとは?

「反射・散乱」で物理的に防御する

UV散乱剤の仕組みは、肌の表面で紫外線を反射・散乱させることです。光を"跳ね返す"イメージに近く、化学的なエネルギー変換を行わないため、成分自体が肌の中で反応することがありません。一方、UV吸収剤(ケミカル)は紫外線のエネルギーを吸収し、熱などの別エネルギーに変換して放出します。反応の際に微量の熱が生じるため、敏感肌では刺激感を覚えることがあるとされています。

日焼け止めの仕組み 紫外線散乱剤(ノンケミカル) 粒子で物理的に反射・散乱 例: 酸化亜鉛 / 酸化チタン 特徴: 肌負担が少なめとされる 注意: 白浮きしやすいことがある 紫外線吸収剤(ケミカル) 分子が吸収し熱に変換 例: メトキシケイ皮酸エチルヘキシル ほか 特徴: 透明・伸びがよい傾向 注意: 肌タイプにより刺激感じる例も

カバーできる紫外線の波長域

紫外線は波長(光の"波の長さ")によって性質が異なります。酸化亜鉛が特に優れているのは、幅広い波長域をカバーできる点です。

紫外線の種類波長の目安到達先主な影響
UVB280〜315 nm肌の表面(表皮)日焼け・赤み・黒化の主因
UVA(short/long)315〜400 nm表皮〜真皮に届きやすい乾燥・光老化※への関与が示唆される

※光老化(photoaging)とは、紫外線の蓄積による皮膚の変化のこと。

酸化亜鉛はUVB(280〜315 nm)からロングUVA(340〜400 nm付近)までを広くカバーするとされています。対して酸化チタンは主にUVBとshort UVAに強く、ロングUVA領域のカバーは酸化亜鉛に比べて弱い傾向があります。「PA値が高い日焼け止めを選びたい」「曇りや屋内でのUVAも気になる」という方にとって、酸化亜鉛の配合は一つの確認ポイントになります。

SPF と PA がカバーする領域(波長と肌への影響) SPF PA UVB(短波長) UVA-II ロングUVA(長波長) 届きやすさ 屋外で浴びる (雲・窓で減る) 屋外・曇りでも 届く 曇り・窓越し・室内 でも届く 肌への到達 表皮(肌の表面) まで 表皮〜真皮の 浅い部分まで 真皮の奥 まで届くとされる 主な影響 浴びた直後に 赤くなる・黒くなる 色素沈着・くすみに 関わるとされる 年月をかけて ハリ低下に関わる 防御の目安 SPF30〜50+ 屋外で長時間ほど高め PA++〜PA++++ 日常もPA++以上、屋外で長時間はPA+++以上 280nm 320nm 340nm 400nm ← 波長が短い      波長が長い →  ※ 個人差・環境差あり

ノンケミカルと呼ばれる理由

「ノンケミカル」とは、UV吸収剤(ケミカルフィルター)を含まず、酸化亜鉛・酸化チタンなどの物理的散乱剤だけでUVを防ぐ処方の通称です。法的な定義ではなく業界の慣用表現ですが、「化学的な反応を起こさずに肌を守る」という意味合いで使われています。


酸化亜鉛の期待される働き(一般論)

化粧品・医薬部外品の文脈において、酸化亜鉛に関して示されている主な働きは以下のとおりです。

  • UVB・UVA双方のカット:幅広い波長域をカバーする物理的防御
  • 日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ:UV防御を通じた効果
  • 収れん・保護作用:皮膚科学の分野では古くから皮膚保護剤として使われてきた歴史があります
  • 抗菌作用の報告:in vitro(試験管内)の研究では抗菌性が報告されているが、化粧品の効能効果として標榜できる内容ではない

配合濃度と処方の目安

化粧品・医薬部外品における濃度

区分配合可能上限(目安)備考
化粧品グレード明確な上限規定なし(各社設計による)使用感・白浮きとのバランスで通常5〜20%程度
医薬部外品25%以下日本の「日焼け止め」規格における上限

配合量が増えると防御力は高まる傾向がありますが、同時に白浮き(肌が白く見える現象)も強くなります。近年は粒子を細かくしたナノ化・超微粒子グレードの酸化亜鉛が使われ、白浮きを抑えながら紫外線防御効果を維持する工夫がされています。

📌 白浮きについて: 酸化亜鉛の粒子が光を散乱する性質そのものが白浮きの原因です。粒子が小さいほど白浮きは軽減されますが、粒子サイズが防御波長域の特性に影響する場合もあるため、製品全体の設計で評価することが大切です。

pHと安定性

酸化亜鉛は弱アルカリ性〜中性付近で安定する成分です。酸性の高い処方(pH4.5以下程度)では溶解や効果への影響が生じる可能性があるとされ、配合相性に関係します(後述)。


相性の良い成分・組み合わせの注意点

相性が良いとされる組み合わせ

組み合わせ相手理由
酸化チタンUVBを強力にカバーする酸化チタンとのブレンドで、広域カバーと白浮き抑制を両立しやすい
シリコーン系オイル分散性を高め、均一な塗布膜を形成しやすい
スクワラン・ホホバオイル皮膚へのなじみを補い、使用感を整える
セラミド・ヒアルロン酸保湿成分との共配合で、防御と保水を同時にサポート

注意が必要な組み合わせ

  • ビタミンC誘導体(特に純粋ビタミンC / L-アスコルビン酸):低pHの酸性処方と酸化亜鉛の組み合わせは、安定性に影響する可能性があるとされます。
  • AHA・BHA(グリコール酸・サリチル酸など):酸性が強い処方では酸化亜鉛の分散状態に影響しうるため、処方段階での確認が推奨されます。
  • ナイアシンアミド:理論上は問題が少ないとされていますが、組み合わせ後の安定性は製品設計によります。

使用上の注意点

白浮きとの付き合い方

酸化亜鉛の最も目立つ使用感のデメリットは白浮きです。特に顔に多めに塗布する場合や暗めのトーンの肌では目立ちやすくなります。対策として:

  • 少量を重ねて塗る(一度に厚塗りしない)
  • 「ナノ化酸化亜鉛」や「超微粒子酸化亜鉛」と表記された製品を選ぶ
  • 化粧下地として重ねる場合は、ファンデーションのカバーを活用する

塗り直しのタイミング

酸化亜鉛はUVを化学的に「消費」しないため、理論上は塗り直し後も効果が持続しやすいとされています。ただし、汗・皮脂・摩擦で塗膜が崩れれば効果は低下します。2〜3時間ごと、または汗をかいた後・タオルで拭いた後は塗り直すことを推奨します。

日焼け止めの塗り直しタイミング +2〜3h +4〜6h +6〜9h 塗布 塗り直し 塗り直し 塗り直し ※ 汗・摩擦・タオルで落ちやすいため、屋外活動や水濡れ後はより頻繁な塗り直しがすすめられる。

ナノ粒子に関する安全性

超微粒子(ナノ化)酸化亜鉛については、欧州連合(EU)の化粧品規制当局(SCCS)などが安全性評価を実施しています。現在のところ、健常な皮膚への外用使用では角質層を超えて浸透するリスクは低いとの評価が多く、傷のない皮膚への通常使用は概ね安全とされています。懸念がある方は、傷や炎症のある肌への使用を避けることが無難です。


酸化亜鉛 vs 酸化チタン:どう選ぶ?

比較軸酸化亜鉛酸化チタン
UVBカバー◎ 広い◎ 広い
ロングUVA(340〜400 nm)カバー◎ 比較的広い△ 弱め
白浮きやや出やすい(粒子設計による)酸化亜鉛より出にくい傾向
テクスチャー重めになりやすい比較的軽い処方が作りやすい
組み合わせ酸化チタンとブレンドが一般的酸化亜鉛とブレンドが一般的
向く人UVAも広くカバーしたい方・PA重視軽い使用感・白浮きを最小化したい方

酸化亜鉛と酸化チタンのどちらを選ぶかは、重視したいポイントで判断できます。UVAカバーやPA値を重視するなら酸化亜鉛、軽い使用感や白浮きの少なさを優先するなら酸化チタンが向いています。多くの「ノンケミカル」製品は、酸化亜鉛と酸化チタンをブレンドして配合することで、UVBとロングUVA両方をカバーしながら使用感を整えています。


研究・参考情報

  • UVAカバー範囲の比較:酸化亜鉛は315〜400 nm領域において、酸化チタン単独と比べて長波長UVA(ロングUVA)領域への吸収・散乱効率が高いとされています。
  • ナノ粒子の安全性評価:EU科学委員会(SCCS)は健常皮膚への外用塗布において、酸化亜鉛ナノ粒子の皮膚経由での全身吸収リスクは低いと評価しています(SCCS/1489/12)。
  • 抗菌性の報告:酸化亜鉛には複数のin vitro試験で抗菌・抗炎症作用を示唆するデータが報告されていますが、化粧品の効能効果として確立されたエビデンスとは異なります。
  • UV吸収剤との併用:酸化亜鉛をオクチノキサートなど一部のUV吸収剤と混合すると、吸収剤の光分解が早まるとの報告があります。処方上の安定性確認が必要とされています。

まとめ

  • 酸化亜鉛はUVBからロングUVA(280〜400 nm)を広くカバーするUV散乱剤(ノンケミカル成分)
  • 紫外線を化学反応なく物理的に反射・散乱するため、肌での化学変換が起きにくく、敏感肌向け処方にも使われやすい。
  • 白浮きが生じやすいが、ナノ化・微粒子設計や酸化チタンとのブレンドで使用感を改善できる。
  • SPF・PA表示を確認し、配合成分として酸化亜鉛が入っているかを成分表で確認することで、自分に合ったノンケミカル処方を選びやすくなる。
  • 2〜3時間ごとの塗り直しで防御効果を維持することが大切。

監修・確認

ORIA Journal 編集部 編集部

ORIA Journalは、紫外線とスキンケアに関する誠実で分かりやすい情報を届ける編集部です。記事は編集部が作成し、薬機法・景品表示法の観点から表現上のリスクを確認したうえで公開しています。

よくある質問

酸化亜鉛は敏感肌でも使えますか?

UV吸収剤(ケミカル)と比べて化学反応を起こさない設計のため、敏感肌向け処方に採用されることが多い成分です。ただし、成分による反応には個人差があるため、初めて使う製品はパッチテストを行うことをおすすめします。

「ノンケミカル」と書いてあればすべて酸化亜鉛が入っていますか?

必ずしもそうではありません。ノンケミカル処方は酸化亜鉛・酸化チタンのどちらか、またはブレンドで構成されます。成分表示で「酸化亜鉛」の記載を確認するのが確実です。

酸化亜鉛の白浮きを防ぐ方法はありますか?

少量を薄く伸ばして重ね塗りする、または「微粒子タイプ・ナノ化タイプ」と表記された製品を選ぶのが有効です。ファンデーションと組み合わせると白浮きが目立ちにくくなります。

酸化亜鉛とUV吸収剤(ケミカル)を同じ日に使っても大丈夫ですか?

製品が完成した状態であれば通常問題なく使用できますが、一部の吸収剤(オクチノキサートなど)を酸化亜鉛と混合すると光安定性に影響する報告もあります。朝の日焼け止めは1製品にまとめるか、処方設計済みの製品を選ぶのが安心です。

酸化亜鉛は水に落ちやすいですか?塗り直しは必要ですか?

酸化亜鉛自体は化学的に消費されませんが、汗・皮脂・タオルで塗膜が崩れると防御効果は低下します。2〜3時間ごと、または汗をかいた後は塗り直すことをおすすめします。

参考文献

  • EU SCCS (Scientific Committee on Consumer Safety), Opinion on Zinc oxide (nano form), SCCS/1489/12(PDF
  • FDA(米国食品医薬品局)「Sunscreen Drug Products for Over-the-Counter Human Use」(OTC Monograph M020、PDF

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。肌の状態やトラブルにお悩みの場合は、皮膚科などの専門医にご相談ください。

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