この記事のポイント
- アボベンゾンは肌の奥まで届くUVA(紫外線A波)を吸収する、世界で広く使われる定番の紫外線吸収剤です。
- 単体では光で少しずつ分解しやすい性質があり、オクトクリレンなどと組み合わせて安定化されるのが一般的とされています。
- 日焼け止めを選ぶときは『UVAに強い=アボベンゾン配合』だけでなく、全成分表示で安定化剤も併用されているかまで見ると読み解きやすくなります。
「アボベンゾンって聞いたことはあるけれど、何を防ぐ成分なのかよく分からない」——そんな方は多いかもしれません。実はアボベンゾンは、肌の奥まで届くUVA(紫外線A波)を吸収する、世界で広く使われる定番の紫外線吸収剤です。ただし単体では光で少しずつ分解しやすい性質があります。この記事では、アボベンゾンの働きと、日焼け止めを選ぶときに見ておきたい「安定化」という視点までをやさしく整理します。
アボベンゾンとは?どんな成分?
ひとことで言うと、アボベンゾンはUVAを吸収するために配合される代表的な紫外線吸収剤です。全成分表示ではブチルメトキシジベンゾイルメタン(t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン)と書かれることが多いです。別名としてParsol 1789という商品名でも知られています。名前は違っても、指しているのは同じ成分です。
紫外線を防ぐ仕組みとUVA散乱剤との違い
紫外線吸収剤は紫外線のエネルギーを受け止める成分です。具体的には、肌の表面で吸収し、熱などの小さなエネルギーに変えて受け流す仕組みではたらくとされています。酸化チタンや酸化亜鉛のように光を反射・散乱させる紫外線散乱剤とは、防ぎ方の考え方が異なります。
アボベンゾンはその吸収剤の中でも、とくにUVAをカバーできる数少ないタイプです。1980年代から世界中の日焼け止めに使われてきました。
紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の比較
| 種類 | 防ぎ方の考え方 | 代表例 |
|---|---|---|
| 紫外線吸収剤 | 紫外線のエネルギーを吸収し、熱などに変えて受け流すとされる | アボベンゾンなど |
| 紫外線散乱剤 | 光を反射・散乱させて防ぐ | 酸化チタン・酸化亜鉛など |
普及の背景と弱点
UVAをしっかり吸収できる成分はもともと限られており、その中で使い勝手のよさから広く普及したのがアボベンゾンです。ただし後で見るように、この成分には「光で分解しやすい」という弱点があります。それを補う工夫とセットで語られることが多い成分でもあります。名前を知っているだけでなく、この弱点と対策まで押さえておくと、日焼け止め選びがぐっと立体的になります。
アボベンゾンは何を防ぐ?UVAとの関係は?
結論から言うと、アボベンゾンが主に受け持つのは、波長のより長いUVAへの備えです。太陽の紫外線は大きく2種類に分けられます。波長の短いUVB(およそ290〜320nm)と、波長の長いUVA(およそ320〜400nm)です。UVBは肌表面の赤みや炎症に、UVAは肌の奥まで届きやすい点に関わるとされています。
UVA帯域の中でのカバー範囲
アボベンゾンは、このUVA帯域の光をよく吸収します。吸収のピークは波長357nm付近にあるとされ、UVAの真ん中あたりを広くカバーできるのが強みです。UVAはさらに2つの帯域に分けられます。波長の短いUVA2(およそ320〜340nm)と、波長の長いUVA1(およそ340〜400nm)です。
UVA1とUVA2、範囲の違い
UVA1は肌の奥まで届きやすいとされています。アボベンゾンはこの長波側にもある程度対応できます。そのためUVBを主に防ぐ成分と組み合わせることで、日焼け止めは幅広い波長に対応できるようになります。だからこそ、UVAへの備えを重視した処方でアボベンゾンがよく選ばれてきたわけです。
なぜアボベンゾンは光で分解しやすいの?
意外に思われるかもしれませんが、アボベンゾンは光を浴びると単体では少しずつ分解しやすい(光不安定な)性質を持っています。これは、この成分がケト-エノール互変異性という2つの形を行き来する構造を持つためと説明されています。ふだんUVAをよく吸収するのは「エノール型」です。強い紫外線を浴び続けると、UVAを吸収しにくい別の形へと移り変わりやすくなるとされています。
分解が進むとUVAへの備えはどうなる?
その結果、時間とともにUVAを防ぐ力が目減りしていくことがあります。ある報告では、アボベンゾン単体では紫外線を浴びた後の残存が23%ほどまで下がる条件もあったと示されています。分解が進むと、せっかくのUVAへの備えが日中のうちに弱まってしまう可能性があるわけです。
分解の進み方をどう捉えるか
この性質は欠点のように聞こえますが、裏を返せば「紫外線のエネルギーをしっかり受け止めている証し」とも言えます。大切なのは、分解を前提にどう設計されているかです。つまり「アボベンゾンが入っているからUVAは万全」と単純には言い切れません。
塗った後も守りが保たれるかという視点が大切になります。ここが、名前や配合の有無だけでは気づきにくいポイントです。
どうやって安定化するの?オクトクリレンとの組み合わせ
大切なのは、アボベンゾンを単体ではなく、支える成分と一緒に配合する設計です。光で分解しやすい弱点は、ほかの成分を組み合わせることで、かなり和らげられることが分かってきました。
オクトクリレンによる安定化の効果
よく使われるのがオクトクリレンです。オクトクリレンはアボベンゾンが受け取った過剰なエネルギーを吸い取り、分解しにくくする役割を果たすとされています。前述の研究では、アボベンゾンにオクトクリレンなどを組み合わせると、残存が23%から90%近くまで高まりました。
この結果は関連する報告で示されています。ほかにも、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(Tinosorb S)のような成分もあります。アボベンゾンの安定性を高めると報告されています。
安定化前後の残存率の目安
| 組み合わせ | 残存率・安定性の目安 | コメント |
|---|---|---|
| アボベンゾン単体 | 残存が23%ほどまで下がる条件もあったと報告 | 光で分解しやすい面がある |
| オクトクリレンなどと併用 | 残存が90%近くまで高まったと報告 | 安定化の工夫の一例 |
| Tinosorb Sなどとの併用 | 安定性を高めると報告されている | 具体的な残存率の数値は本文に記載なし |
全成分表示で安定化剤を確認する
そこで役立つのが、全成分表示の読み方です。パッケージ裏の成分欄で、ブチルメトキシジベンゾイルメタンの近くを見てみましょう。オクトクリレンなどの安定化に関わる成分が一緒に並んでいるかがポイントです。「UVAに強い=アボベンゾン配合」で終わらせず、安定化されているかまで見るのが、一歩進んだ選び方です。
全成分表示チェックの早見表
| 見るポイント | 全成分表示での例 | 何が読み取れる? | 注意点 |
|---|---|---|---|
| UVA吸収剤の有無 | ブチルメトキシジベンゾイルメタン | UVAへの備えがあるか | あるだけでは持続性は不明 |
| 安定化剤の併用 | オクトクリレン等が近くに並ぶ | 光での分解を抑える設計か | 併用しても分解はゼロではない |
| 他フィルターとの組み合わせ | UVB吸収剤・散乱剤なども併記 | 幅広い波長への対応か | 配合量までは表示から不明 |
| 表示順 | 前半にあるほど配合量が多め | おおよその配合量の目安 | 1%以下は順不同のこともある |
この表はあくまで読み解きの目安です。配合量そのものは表示からは正確に分からないため、細かな性能を断定する材料にはなりません。それでも、成分の「そろい方」を見るだけでも、処方の考え方はずいぶん見えてきます。
アボベンゾンを使うときの注意点は?
まず押さえたいのは、配合できる量には国ごとの上限があり、使い方しだいで実際の守りは変わるということです。アボベンゾンは各国で紫外線吸収剤として認められています。配合上限はEUでは最大5%程度、米国では最大3%程度とされています。
配合上限の目安(地域別)
| 地域 | 配合上限の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| EU | 最大5%程度 | 上限の範囲内で配合量が調整される |
| 米国 | 最大3%程度 | 同上 |
上限の範囲で、日焼け止めの目的や使い心地に合わせて配合量が調整されます。数字が大きいほどよいという単純な話ではなく、他の成分とのバランスや安定化まで含めて設計されている点が大切です。
使用量と塗り直しの目安
使うときは、規定量をムラなく塗ることが前提です。試験で示されるSPFやPAの値は、決められた塗布量での結果なので、薄づきだと守りは目減りします。顔なら手のひらにパール2粒ほどが一つの目安とされます。
こまめな塗り直しの重要性
そして、汗や皮脂、こすれ、そして光による分解もあるため、2〜3時間ごとの塗り直しを心がけてください。アボベンゾンのように光で少しずつ変化しうる成分では、この塗り直しがとくに理にかなっています。一度塗れば一日じゅう安心というわけではなく、こまめに重ねることが上手なつきあい方です。
使用量・塗り直しの早見表
| 項目 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 使用量 | パール2粒相当が目安 | 薄づきだと守りが目減りするとされる |
| 塗り直しの頻度 | 2〜3時間ごとが目安 | 汗・皮脂・こすれ・光による分解があるため |
| 組み合わせる対策 | 日傘・帽子・衣類など | こまめに重ねる工夫の一つ |
肌との相性と紫外線対策の組み合わせ
肌に合うかどうかは、処方や肌の相性で変わり個人差があります。「吸収剤だから刺激が強い」「散乱剤だからやさしい」と一律には決められません。気になる場合は少量から試し、心配なときは皮膚科など専門家に相談すると安心です。日焼け止めだけに頼らず、日傘・帽子・衣類も組み合わせると、より無理なく紫外線とつきあえます。
研究・参考情報
- アボベンゾン(ブチルメトキシジベンゾイルメタン)はケト-エノール互変異性により光で分解しやすく、リポソームや脂質ナノ粒子などの技術で光安定性を高める工夫が研究されていると総説で整理されています(Gholap ら, 2023)。
- アボベンゾンにオクトクリレンやTinosorb Sなどを組み合わせると、紫外線照射後の残存が高まり、UVAを防ぐ力が保たれやすくなると報告されています(Chatelain ら, 2001 ほか)。
- 波長の長いUVA(UVA1, 340〜400nm)は肌の奥まで届きやすく、酸化ストレスなどを通じて肌の変化に関わると総説で報告されています(Bernerd ら, 2022)。効果や感じ方には個人差があります。
まとめ
- アボベンゾンは、肌の奥まで届くUVAを吸収する定番の紫外線吸収剤で、別名はブチルメトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789)です。
- 吸収のピークは357nm付近で、UVAの真ん中あたりを広くカバーできるのが強みです。
- 一方で、ケト-エノール互変異性により単体では光で分解しやすく、UVAを防ぐ力が目減りすることがあります。
- そのためオクトクリレンなどと組み合わせて安定化されるのが一般的で、全成分表示で安定化剤の併用まで見るのが一歩進んだ選び方です。
- 配合上限は国ごとに定められ、規定量をムラなく塗り、2〜3時間ごとの塗り直しと日傘・帽子などを組み合わせて使いましょう。相性には個人差があります。
監修・確認
ORIA Journal 編集部 編集部
ORIA Journalは、紫外線とスキンケアに関する誠実で分かりやすい情報を届ける編集部です。記事は編集部が作成し、薬機法・景品表示法の観点から表現上のリスクを確認したうえで公開しています。
よくある質問
アボベンゾンとは、どんな成分ですか?
アボベンゾンは、肌の奥まで届くUVA(紫外線A波)を吸収するために配合される、世界で広く使われる定番の紫外線吸収剤です。全成分表示ではブチルメトキシジベンゾイルメタン(t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン)と書かれることが多いです。また、Parsol 1789という名前でも知られています。吸収のピークは波長357nm付近にあるとされ、UVAの中心帯域を広くカバーできるのが特徴です。
アボベンゾンはUVBも防げますか?
アボベンゾンが主に受け持つのは、波長の長いUVAへの備えです。肌表面の赤みに関わるUVB(およそ290〜320nm)は、別の紫外線吸収剤や散乱剤が受け持つのが一般的です。そのため日焼け止めでは、アボベンゾンとUVBを防ぐ成分を組み合わせます。幅広い波長に対応できるよう設計されていることが多いです。
アボベンゾンは光で分解しやすいと聞きましたが、大丈夫ですか?
アボベンゾンはケト-エノール互変異性という構造の性質を持ちます。そのため単体では光を浴びると少しずつ分解しやすい(光不安定な)面があります。ただし、オクトクリレンなどの成分と組み合わせることで分解を抑えられることが分かっています。
実際の製品ではこうした安定化の工夫がされているのが一般的とされています。選ぶときは全成分表示で安定化剤も併用されているかを見ると読み解きやすくなります。
日焼け止めを選ぶとき、全成分表示のどこを見ればよいですか?
まずブチルメトキシジベンゾイルメタンの記載でUVA吸収剤の有無を確認しましょう。その近くにオクトクリレンなど安定化に関わる成分が一緒に並んでいるかも見てみましょう。表示は前半にあるほど配合量が多めの目安になります。ただし配合量そのものは表示からは正確に分からないため、あくまで処方の考え方を読み解く目安として活用してください。
アボベンゾン配合なら塗り直しは不要ですか?
いいえ、塗り直しは必要です。SPFやPAの値は決められた塗布量での試験結果で、薄づきや、汗・皮脂・こすれ、光による分解でも守りは目減りします。2〜3時間ごとを目安にこまめに塗り直し、日傘や帽子、衣類なども組み合わせると、より無理なく続けられます。肌との相性には個人差があるため、気になるときは専門家に相談すると安心です。
参考文献
- Gholap AD, Sayyad SF, Hatvate NT, Dhumal VV, Pardeshi SR, Chavda VP, Vora LK. "Drug Delivery Strategies for Avobenzone: A Case Study of Photostabilization." Pharmaceutics. 2023;15(3):1008. doi:10.3390/pharmaceutics15031008. PMID: 36986867 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36986867/
- Chatelain E, Gabard B. "Photostabilization of butyl methoxydibenzoylmethane (Avobenzone) and ethylhexyl methoxycinnamate by bis-ethylhexyloxyphenol methoxyphenyl triazine (Tinosorb S), a new UV broadband filter." Photochem Photobiol. 2001;74(3):401-406. PMID: 11594052 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11594052/
- Bernerd F, Passeron T, Castiel I, Marionnet C. "The Damaging Effects of Long UVA (UVA1) Rays: A Major Challenge to Preserve Skin Health and Integrity." Int J Mol Sci. 2022;23(15):8243. doi:10.3390/ijms23158243. PMID: 35897826 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35897826/
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。肌の状態やトラブルにお悩みの場合は、皮膚科などの専門医にご相談ください。