日焼け止めのパッケージに「SPF50・PA++++」と書いてあっても、実は紫外線には「守りにくい帯域」が存在します。それがロングUVA(UVA1)です。シワやたるみが気になりはじめた30代にとって、ロングUVAを知るかどうかは、日々のUVケアの精度を大きく左右するかもしれません。今回は、その正体と肌への影響、そして防御のポイントを、科学的な根拠をたどりながら丁寧にお伝えします。
この記事のポイント
- ロングUVA(UVA1)は波長340〜400 nmの紫外線帯域。可視光のすぐ手前にあり、肉眼では見えません。
- 曇りの日やガラス窓越しでも届き、肌の奥にある真皮(しんぴ)層まで届くとされています。
- 真皮のコラーゲン・エラスチンに影響し、シワやたるみなどの光老化に関わるとされています。
- SPFはUVBの防御指標、PAはUVAの防御指標ですが、PAだけではロングUVAへの防御力を完全には把握できないことがあります。
- 酸化亜鉛(ZnO)配合の日焼け止めは、ロングUVAを含む広い波長に対応しやすいとされています。
ロングUVAとは──紫外線の「見えにくい脅威」

紫外線の種類をおさらいする
太陽光に含まれる紫外線は、波長の長さによって大きく3種類に分類されます。
| 種類 | 防御指標 | 波長 | 地表への到達 | 主な影響部位 |
|---|---|---|---|---|
| UVC | ー | 100〜280 nm | ほぼ到達しない(オゾン層で吸収) | ー |
| UVB | SPF | 280〜315 nm | 一部到達 | 表皮(肌の表面層) |
| UVA | PA | 315〜400 nm | 多く到達 | 表皮〜真皮(しんぴ/肌の奥の層) |
UVAはさらに、波長の短いショートUVA(UVA2:315〜340 nm)と、波長の長いロングUVA(UVA1:340〜400 nm)に分けられます。
ロングUVAの定義と「400 nm」という数字
ロングUVAとは、波長340〜400 nmの紫外線帯域を指します。「Deep UVA」や「UVA1」とも呼ばれ、特に380〜400 nm付近は可視光(目に見える光)のすぐ手前に位置します。400 nmは「虹の紫色」のさらに外側であり、肉眼では見えないけれど、着実に肌に届いている光です。この「波長が長い」という特性が、ロングUVAを厄介にしている理由のひとつです。
ロングUVAが肌の奥まで届くメカニズム

波長が長い=エネルギーは低いが、深く届く
光は波長が長いほど、物質を透過しやすい性質があります。具体的には:
- UVB(短波長): 表皮(角層〜顆粒層など、深さ0.1〜0.2 mm程度)でほぼ吸収される
- ショートUVA(UVA2): 表皮を超え、真皮の浅い部分まで到達
- ロングUVA(UVA1): 真皮(深さ1〜2 mm)まで到達するとされる
UVBは「屋外で強い日差しを浴びたあと、肌が赤くなる・黒くなる」直接的な反応に関わります。一方ロングUVAは、「今日は曇りだったし、窓の内側にいたのに…なぜか年々シワが増えている気がする」という、じわじわと積み重なる変化に関わっているとされます。
曇りの日も、窓越しでも届く
ロングUVAの届きやすさには、もう一つ重要な特性があります。
- 雲を透過する: UVBに比べ、曇天でも地表に届く割合が高いとされています
- 一般的なガラスを透過する: UVBは多くのガラスでカットされますが、UVAは透過しやすい性質があります(ガラスの種類によって異なります)
- 年間・1日を通じて比較的安定して降り注ぐ: UVBは夏の正午に強くなる一方、UVAは季節・時間帯による変動がUVBより小さいとされています
冬の曇り空の日、車の窓越しに1時間ドライブしたとき、オフィスの窓際で一日仕事をしたとき──そういった場面でも、ロングUVAは静かに肌に届き続けています。
ロングUVAが真皮層に与える影響
真皮とはどこか
皮膚は大きく「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層で構成されています。真皮は表皮の下に位置し、コラーゲン(膠原繊維)やエラスチン(弾性繊維)といった肌の「弾力の土台」を含む層です。真皮の厚みは部位によりますが、顔で約1〜2 mmであり、ロングUVAはこの深さにまで届くとされています。
コラーゲン・エラスチンへの影響
研究では、UVA(特にロングUVA帯域)が真皮のコラーゲンやエラスチンに影響することが分かっています。具体的には、これらを分解する酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ、略してMMP)の活性に影響するとされています(出典)。
コラーゲンは肌の「ハリのもと」、エラスチンは「弾性のもと」。これらが長年の蓄積で変性すると、ふっくら感が失われたり、肌の輪郭がぼやけたりする変化につながるとされています。「最近は特に焼けていないのに、なんとなくたるんできた」と感じるとしたら、UVAの長年にわたる蓄積も、そのひとつの背景として研究者に注目されています。
活性酸素(ROS)の発生
ロングUVAは、UVBと比べてDNAへの直接的な損傷は小さいとされる一方で、皮膚内で活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)を発生させるとされています(出典)。活性酸素とは、いわば「肌の細胞にとって有害な不安定な酸素分子」のことで、これが肌の内部で酸化ストレスを引き起こすと考えられています。
即時型黒化と持続型黒化
UVAには、照射直後から現れる「即時型黒化(IPD:Immediate Pigment Darkening)」と、照射後数時間〜数日で現れる「持続型黒化(PPD:Persistent Pigment Darkening)」を引き起こす作用があるとされています。
PPDは特に、既存のメラニンを酸化させ、肌をくすませる反応として知られています。SPFがUVBへの防御指標であるのに対し、PA(PPD比)はこのUVAへの防御の指標です。
ここ重要: PA+++やPA++++という表示は、このPPDに対してどのくらい防御できるかを示しています。ただし、PPDはショートUVAからロングUVAまでのUVA全域に関わるため、「PA値が高い=ロングUVAに完全対応」とは言い切れない点に注意が必要です(後述)。
日焼け止めの「ロングUVA防御」を読み解く
SPF・PAだけでは分からない「穴」がある
一般的に日本の化粧品表示で確認できる指標は:
- SPF(Sun Protection Factor): UVBへの防御指標
- PA(Protection Grade of UVA): UVAへの防御指標(PPD比をもとに算出)
しかしPAの測定に使われる光源は、すべてのUVA帯域を均等にカバーしているわけではありません。そのため、ロングUVA(特に380〜400 nm)に対する防御力が製品によって大きく異なることが、研究者や皮膚科医の間で指摘されています(出典)。
「クリティカルウェーブレングス」という考え方
欧米では、日焼け止めの広域スペクトラム(ブロードスペクトラム)性能を評価する指標としてクリティカルウェーブレングス(臨界波長)が使われることがあります。これは、日焼け止めが370 nm以上の波長をどれだけカバーできているかを示す尺度です(出典)。
「SPFもPAも高い日焼け止めを使っているのに、なんとなく光老化(こうろうか/紫外線による肌老化)が気になる…」と感じる場合、ロングUVA(380〜400 nm)への防御が不十分な製品を選んでいた可能性も、ゼロではないかもしれません。
防御剤の種類とロングUVAへの対応
日焼け止めに使われる紫外線防御成分は大きく「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤(物理的防御剤)」に分けられます。
| 防御剤の種類 | 代表的な成分 | ロングUVAへの対応 |
|---|---|---|
| 紫外線吸収剤(有機系) | ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(DHHB)など | 成分によって異なる。一部の成分はロングUVA帯域にも対応 |
| 紫外線散乱剤(無機系) | 酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO₂) | 酸化亜鉛はUVA全域に比較的広く対応するとされる |
酸化亜鉛は、ロングUVAを含む幅広い波長に対応できる散乱剤として注目されています。一方で「紫外線吸収剤フリー」を選ぶ際は、配合されている散乱剤の種類と濃度がロングUVAの防御に関わることを意識しておくとよいでしょう。
日常生活でロングUVAを意識するシーン
「室内にいるから大丈夫」は通用しない
一般的なガラス窓はUVBをある程度カットしますが、UVAは透過しやすいとされています。つまり:
- 窓際のデスクワーク → 継続的なUVA暴露の可能性
- 車の運転(サイドウィンドウ) → 特にサイドガラスはUVA透過率が高い場合がある
- カフェや電車の窓際席 → 少量でも毎日積み重なることに注意
積み重ねが大切な理由
光老化(紫外線による肌老化)については、皮膚科学で広く知られている見解があります。一日に大量に浴びるよりも、少量を何年にもわたって積み重ねる影響が大きいとされています(出典)。つまり、「今日はそんなに外に出ていないから」ではなく、「毎日どれだけ積み重ねないようにするか」という発想の転換が、ロングUVAケアの核心といえます。
年間・時間帯による変動が小さい点も要注意
UVBは夏の晴れた日の正午に強く、冬や曇りの日には大きく減少します。一方、UVA(特にロングUVA)は季節・時間帯による変動がUVBに比べて小さく、一年を通じて安定して降り注いでいるとされています(出典)。冬でも日焼け止めを」という推奨の背景には、このUVAの年間安定性があります。
よくある質問
Q1. ロングUVAとUVA1は同じですか?
はい、同じ紫外線帯域を指す言葉です。波長340〜400 nmの紫外線を「UVA1」または「ロングUVA」と呼びます。「Deep UVA」と表現されることもあります。一方、315〜340 nmはUVA2(ショートUVA)と呼ばれます。
Q2. PA++++であれば、ロングUVAは完全にカバーされますか?
PA値はUVAへの防御の目安になりますが、PAの測定法ではロングUVA帯域(特に380〜400 nm)への防御が十分に評価されない場合があるとされています。「PA++++=ロングUVA完全対応」と断言することは難しく、製品によって実際のロングUVA防御力に差がある可能性があります。
成分(酸化亜鉛の配合など)も合わせて確認することが参考になります。
Q3. 室内にいれば日焼け止めは不要ですか?
UVBは一般的なガラスで多くカットされますが、UVA(ロングUVAを含む)は透過しやすい性質があります。窓際で長時間過ごす場合や車の運転が多い方は、室内でも日焼け止めを活用することを皮膚科医は推奨することが多いです。
Q4. ロングUVAは肌に何年くらいで影響が出ますか?
個人差があり、一概には言えません。
光老化の研究では、紫外線の影響は何年・何十年という積み重ねで現れるとされています。
変化を感じてから対策を始めるよりも、早期から継続的にケアすることが重要とされています(出典)。
Q5. 「紫外線吸収剤フリー」の日焼け止めはロングUVAに対応していますか?
紫外線吸収剤フリーの製品が必ずしもロングUVA非対応というわけではありません。散乱剤(特に酸化亜鉛)を適切に配合した処方であれば、ロングUVAを含む広い波長帯に対応できるとされています。成分表で酸化亜鉛(Zinc Oxide)の有無を確認するのが一つの判断軸になります。
監修について
本記事は、皮膚科学・紫外線研究・薬機法に関する最新の知見をもとに、ORIA Journal編集部が作成しました。掲載内容の正確性・安全性については、専門家による監修のもと定期的に見直しを行っています。
研究・参考情報
- UVA1(ロングUVA)の真皮到達と光老化への関与: 複数の皮膚科学研究において、UVA1が真皮層のコラーゲン・エラスチンの変性に関与するとされている。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性化を介したコラーゲン分解メカニズムへの言及(出典)。
- 活性酸素種(ROS)とUVA: ロングUVA照射が皮膚細胞内でROSを発生させ、酸化ストレスを引き起こすとする研究知見(出典)。
- PPDとPA評価の関係: PPD(持続型黒化)をもとに算出されるPA値が、ロングUVA帯域(380〜400 nm)の防御力を必ずしも十分に反映しない可能性(出典)。
- クリティカルウェーブレングス(臨界波長): 欧米のブロードスペクトラム評価で用いられる370 nm基準の考え方(出典)。
- 光老化の累積性: 紫外線による肌変化が長期の蓄積によるものであるとする皮膚科学上の広く認知された見解(出典)。
- ガラスのUVA透過性: 一般的なガラスがUVBを遮断する一方でUVAを透過しやすいとする知見(出典)。
- UVAの年間・季節変動の小ささ: UVAがUVBに比べ季節・時間帯による変動が小さく、年間を通じて比較的安定して到達するとする知見(出典)。
まとめ
- ロングUVA(UVA1)は波長340〜400 nmの紫外線で、「Deep UVA」とも呼ばれる。
- 波長が長いため、曇りの日・窓越しでも届き、真皮層(深さ1〜2 mm)まで到達するとされる。
- 真皮のコラーゲン・エラスチンに影響し、シワ・たるみなどの光老化に関わるとされている。
- SPFはUVBへの、PAはUVAへの防御指標だが、PAだけではロングUVAへの防御力を完全に把握できない場合がある。
- 酸化亜鉛を含む処方は、ロングUVAを含む広い波長帯への対応に適しているとされる。
- 光老化は少量の蓄積が鍵。「今日は外に出ていないから」ではなく、毎日の積み重ねとして考えることが大切。
- 室内や冬でも、窓際にいる時間が長い場合は日焼け止めを活用する習慣が推奨される。